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第2回
シェアトップの「角川つばさ文庫」、親しみやすさ追求に徹する
 2009年に創刊され、12年以降、児童文庫市場でシェアトップの「角川つばさ文庫」。細田守や新海誠、ピクサーやディズニーなどの映画作品のノベライズで読者との接点を増やしつつ、宗田理「ぼくら」が累計250万部、秋木真「怪盗レッド」が累計110万部突破と、オリジナル作品でも多数のヒットシリーズを抱える。
 
 宗田らが選考委員を務める角川つばさ文庫小説賞は、13年にスタートし、一般部門の第1回大賞受賞作・床丸迷人『四年霊組こわいもの係』、第2回大賞受賞作・深海ゆずは『こちらパーティー編集部』、金賞受賞作・あさばみゆき『いみちぇん!』など、初期から読者に評判の作品が続出したことで書店の引きが強くなり、オリジナルが好調に動く流れができた。
 
 大人は子どもに「良い本」を読ませたい。子どもは「良い本だから」ではなく、「面白そう」と思うから手に取る。児童書にはこうした駆け引きがあるが、つばさ文庫は、「良い本を子どもが面白いと感じられるように出す」( KADOKAWA文芸局児童図書編集部角川つばさ文庫編集長・服部圭子氏)。
 
 「ドリトル先生」「アリス」など児童文学の古典や角川文庫発のロングセラーも、つばさ文庫化する際には子どもが手に取りやすいカバーに装いを変え、難しい言葉には注釈も入れる。表4のあらすじ部分は主人公の一人称で語り、カバーソデから本文に入るまでの導入部にもポップな雰囲気のデザイン、イラストを配した登場人物紹介ページを用意。ものによってはマンガを数ページ入れるなど、徹底して読者に親しみやすくする。
 
 読者の中心は小学校5年前後で、女の子の方が多い。女子は小説を、男子は柳田理科雄『ジュニア空想科学読本』など「不思議なものを解明する」ものを好む傾向にある。
 
 小中学生の読書に朝読の影響は大きいが、朝読ならではの事情もある。ベネッセが進研ゼミ加入者に提供する電子図書館サービス「まなびライブラリー」の利用者調査(17年8月実施)では、小学生・中学生の検索ワード各5位に「角川つばさ文庫」がランクインと、レーベル単位で支持されているが、実は検索ワードのトップは、小中問わず「恋」「恋愛」だ。しかし朝読で恋愛ものを読むと、男子にからかわれることもある。ニーズは強いが、タイトルや表紙から恋愛ものだとわかると、朝読では選ばれにくい。
いまどきの小学生に人気のヨシタケ本
 
 そこに来てつばさオリジナル作品では、「男女でタッグを組んで何かするうち、自然と恋が絡む」ものが多い。それも、支持理由のひとつかもしれない。
 
 「近年、児童文庫に各社が参入してきている。その中で変わらず支持される本づくりをしていくと同時に、小学校時代は多読だった子が、中高と進むと離れることが少なくないことに対して、読書を続けてもらえるよう何ができるかを全社的に考えていきたい」(服部氏)

(飯田一史・ライター)

(2019年5月9日更新  / 本紙「新文化」2019年4月25日号掲載)
飯田一史プロフィール
ライター。 文芸とサブカルチャーを中心に取材・執筆を手がける。著書に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうするの?』(星海社新書)、『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)などがある。
               
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