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第3回
累計2000万部の「ぼくら」シリーズ、変わらぬ普遍性と時代性
 宗田理が、1985年に角川文庫から刊行した『ぼくらの七日間戦争』。同作を皮切りに、イタズラ好きな英治やリーダーシップのある相原などの少年少女が活躍する「ぼくら」はシリーズ化され、中高生から絶大な支持を受けた。
 
 時代が下って2009年には、「角川つばさ文庫」の創刊ラインナップに加わり、既刊を出し直すだけでなく、11年の『ぼくらの学校戦争』以降は、書き下ろしを挟みながら現在もシリーズは続く。角川文庫版、ポプラ社のハードカバー版(図書館版)を合わせると累計2000万部、つばさ文庫版だけで250万部を突破している。
 
 かつては中高生から、今は小中学生から支持を受ける「ぼくら」。変えた(変わった)点、変わらない点はどこなのだろう? 創刊以来、つばさ文庫で宗田氏を担当する、KADOKAWA文芸局児童図書編集部・坂本真樹氏に訊いた。
『ぼくらの七日間戦争』
 
 「宗田さんと相談しながら、『七日間戦争』のなかの学生紛争に関する描写など、今の子どもたちにわかりにくいところ、性的な表現、今の視点では差別的に見える表現は改稿し、漢字をひらいたりしています。加筆や修正は巻を追うごとに増える傾向にあり、著者の意向で今出すにあたってタイトルを変えることもあります」
 
 つまりつばさ版「ぼくら」は、ただの「人気シリーズの出し直し」ではなく、作品の核を残しつつ今の読者に向けてリニューアルしたものなのだ。
 
 「時代が変わっても、読者が小中学生に変わっても、子どもたちが抱く『大人から見下されている』という不満は変わらない。それに対して暴力やお金ではなく子どもらしいイタズラや仲間との友情を武器に、ぎゃふんと言わせる痛快な部分が支持されているのだと思います」(坂本氏)。
 
 読者は公式サイト上から、感想だけでなく「『ぼくら』アイディアを送る」ことができるが、そうしたファンの要望を汲んで、著者がプロットを考えた作品もある。80年代にシリーズを始めた時点で50代だった著者は、現在に至るまで子どもの声に耳を傾け、子どもの側に立って「悪い大人をやっつける」物語を書き続けてきた。それが「普遍性」を担保するとともに、時事や新しい技術への強い関心が「時代性」を獲得しえているのだろう。
 
 「ぼくら」同様、つばさ文庫で人気のシリーズ「怪盗レッド」(秋木真著)とのコラボ小説『ぼくら×怪盗レッド』(19年1月刊)はVRを扱っているが、これが今年91歳になる作家のアイデアだというから驚きだ。
 
 坂本氏はまた、「18年にはポプラ社主催の『こどもの本¢国I挙』で第8位となり、著者のテレビ出演もあいまって既刊が大きく動きました。19年にはアニメ映画が公開予定ですが、89年の実写映画公開から30年経ち、当時の読者は親世代。親子で再びの『ぼくら』ブームを体験してもらえれば」と話す。

(飯田一史・ライター)

(2019年6月13日更新  / 本紙「新文化」2019年5月30日号掲載)
飯田一史プロフィール
ライター。 文芸とサブカルチャーを中心に取材・執筆を手がける。著書に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうするの?』(星海社新書)、『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)などがある。
               
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