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第5回
韓国学習マンガ成功の秘訣、「Why?シリーズ」世界45カ国に
 本欄で前回取り上げた「サバイバル」シリーズは、韓国発の学習マンガだが、突然変異的に誕生したわけではない。
 
 現在、韓国で書店などの学習マンガコーナーを見ると、必ずしも学習的要素のないマンガを含む「子ども向け・フルカラーの大判マンガ」、つまりアニメのフィルムブックやシールブックなども置かれている。もちろん日本でいう狭義の「学習マンガ」にあたるものも、古くから存在する。
 
 日本では近年、「子ども向け学習マンガ」が「青年や大人も読む教養マンガ」として読まれる(または当初から、青年・大人向けのものが刊行される)傾向があるが、教育・学習熱の高い韓国では、すでに80年代からそうだった。
 
 モノクロで描かれた、必ずしも子ども向けではない教養マンガ≠フ草分けに、イ・ウォンボク『遠い国 隣の国』がある。ドイツ留学帰りの著者が自身のヨーロッパ体験を描いたこの作品は、81年〜86年に「少年韓国日報」に連載された。87年に単行本化されると、累計1700万部を超える大ベストセラーとなった。
 
 「サバイバル」のような「フルカラー・大判・マンガ+補足記事」スタイルの韓国学習マンガが確立されていったのは、90年代後半からである。決定的に定着したきっかけは、ホン・ウンヨン『マンガで見るギリシア・ローマ神話』(累計2000万部超)だった。
 
 現在も刊行中の代表的なシリーズには、科学学習マンガの「サバイバル」と「Why?」、次いで漢字学習マンガの「魔法千字文」などがある。
 
 ここでは「Why?」シリーズについて紹介しよう。韓国で89年に刊行が始まった「Why?」は、日本でも学研教育出版(当時)から2011〜13年に翻訳版が刊行されたものの、その後刊行が途絶えた。
 
 しかし韓国国内では、累計販売部数6900万部を突破、12言語圏45カ国に輸出され、14年までに累計販売部数300万部と、国際的なヒット作となっている。
 
 「サバイバル」同様「Why?」も、日本以外の多くの国のマンガでよく見られる「左開き・フルカラー」スタイルだ。また、ハリウッド映画やアメリカのTVドラマ、香港の武侠映画やマンガなどのエンターテイメントの影響を受けながらも、過激な表現がなく、親が安心して買い与えられる作品に仕上がっている。それでいながら大人が読んでも面白いほど情報の密度が濃く、近年注目度の高いSTEM(科学・技術・工学・数学)系のテーマも多いため、国籍を問わず、関心がもてる内容である。
 
 そもそも多くの国では、いまだに「マンガ=子どものもの」という意識が強い。つまり、児童マンガ市場は世界中に存在するのだ。そこに、大人の読書にも耐えうる、娯楽と勉強を兼ね備えた良質な作品を届けられたことが、韓国学習マンガの国際的な成功の理由だろう。
 
 
 ◇本稿作成にあたり、コミックポップエンターテインメント・宣政佑氏から、多くの情報提供をいただきました。

(飯田一史・ライター)

(2019年8月19日更新  / 本紙「新文化」2019年7月25日号掲載)
飯田一史プロフィール
ライター。 文芸とサブカルチャーを中心に取材・執筆を手がける。著書に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうするの?』(星海社新書)、『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)などがある。
               
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