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第10回
世界で大人気「グレッグのダメ日記」、男の子からもファンレター
 勉強も運動も嫌いだが、ゲームは大好き、親や先生に言われたことをサボるためには、知恵を絞って一生懸命になる少年グレッグ。アメリカの児童文学作家、ジェフ・キニー作「グレッグのダメ日記」は、主人公の日記という体で書かれており、シリーズ累計が全世界で2億3000万部。日本では中井はるな氏の訳でポプラ社から刊行され、小学校中学年男子を中心に、ここ10年あまり支持されている。この年代の男子向けも翻訳ものも苦戦といわれるなかで、例外的な作品だ。
 
 「『スポンジ・ボブ』など、米アニメの世界にはカラッとしたブラックユーモア、アメリカン・ジョークに満ちた作品があるが、児童書では『グレッグ』が画期的かもしれない」(ポプラ社児童書事業局副局長・高林淳一氏)
 
 たとえばグレッグの家族。それぞれが新年の決意をするが、ママは「今日からジムに行く」と言いながらずっとテレビを観ており、ダイエットを決めたパパは、夕食後に隠れてチョコを食べる。弟は「おしゃぶりを吸わない」と宣言した1分後にそれをゴミ箱から探し出し、兄はそもそも決意すらしない。要するに、家族みんなダメダメである。
 
 こんな具合にきれいごとではなく、いかにもありそうな煩悩と虚栄心に満ちた(傍目から見れば笑える)人間関係に振り回されながらも、グレッグは自らも加わって、さらに引っかき回していく。
「グレッグのダメ日記」シリーズ最新作
 
 「グレッグはダメな子ではあるものの、失敗してもめげずに個性的なアイデアを出し、現実にやったら怒られるようなことを読者の代わりにやってのけます。そこが子どもたちに愛されているのかな、と」(児童書事業局児童編集第一部・林利紗氏)
 
 「グレッグ〜」には毎巻、読者が日記を書いて送るようにハガキを挟み込んでいる。「『からっぽのランドセルを背負って学校に行った』なんて文章を、読者は嬉々として書いてきてくれます。男の子がファンレター≠送ってくるなんて、他の本ではまずないはず」(高林氏)
 
 本書には、もし実際に起きたら冗談にしてもきついと思えるような出来事も描かれる。しかし、決してイヤな気持ちにはさせない。それはシンプルさとインパクトを両立させた、デザイン性の高い絵柄のおかげだ。また絵と文を作者ひとりで手がけるからこその、「文章では書くが、あえて絵では見せない」というさじ加減のゆえでもある。
 
 宣伝手法としては、子どもが好むYouTuberの動画に6秒広告を出しているほか、毎年ボローニャで行われるワールドミーティングで、各国の担当者が共有する販促の成功例などを参考に、施策を展開している。日本では08年から刊行し、シリーズ累計120万部は十分なヒット作に思えるが「他国に比べるとまだまだ」とのこと。今春にはスピンオフ作品を刊行し、新たな企画も予定している。
 
 ポプラ社のメガヒット作品といえば「ズッコケ三人組」「かいけつゾロリ」「おしりたんてい」……ふだん本を読まない子も熱狂させる一方で、刊行当初は一部の大人に眉を顰めさせたようなタイトルが並ぶ。「グレッグ」も実に同社らしいシリーズである。
 

(飯田一史・ライター)

(2020年1月23日更新  / 本紙「新文化」2020年1月9日号掲載)
飯田一史プロフィール
ライター。 文芸とサブカルチャーを中心に取材・執筆を手がける。著書に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうするの?』(星海社新書)、『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)などがある。
               
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