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第12回
社会に定着した「読み聞かせ」、JPICの講座で人材輩出
 90年代後半から多面的に展開された読書推進運動において、政官民連携の要のひとつとして活動してきたJPIC(出版文化産業振興財団)は、読み聞かせ人材の育成を20年以上にわたり続けている。
 
 出版についての網羅的な学習を目的に、93年に始めたのが「JPIC読書アドバイザー養成講座」。大きな反響を得て初回は定員の20倍以上の申込者があった。以来現在に至るまで、100人の募集定員を割ることのない人気講座として、毎年開講している。
 
 一方、都内開催のため、交通費やスケジュール面から「地方在住者は参加しづらい」との声も出た。それを受けて99年から子どもの本の読み聞かせに特化し、全国47都道府県を巡回する「JPIC読みきかせサポーター講習会」を開始。20年間継続し、昨年延べ500回を数えた。
 
 JPIC事務局長・中泉淳氏は「プログラムの不断のバージョンアップを重ね、今年度中に参加者が5万人に達する見込みです」という。
 
 「サポーター講習会」の参加者は、全体の3割が(読書ボランティアと思われる)主婦。長年、文庫活動を続けていた層と、それとは別の若い世代の層がある。次いで近年では、図書館員、学校司書などの図書館関係者が2割、他に学校教師、保育士、書店員など。受講者は圧倒的に女性が多いが、最近は男性が1割弱みられる回もある。
 
 「かつての地域の読書推進活動のイメージは、場所は公民館の会議室、資料は手作りのモノクロ刷り。しかし我々はそれより少し良い会場を借り、2001年から出版するカラー雑誌『この本読んで!』なども関連づけて、初心者が入りやすい雰囲気にすることを意識しました」(中泉氏)。
 
 また「育成と実践の両輪で」を念頭に、各講座の修了・参加者がJPICと一緒に活動できるよう、読み聞かせ要員の募集をメールマガジンや『この本読んで!』を通じて告知した。さらに98年に日書連、児童出協(日本児童図書出版協会)とともに始めた書店店頭でのおはなし会「第四土曜日は、こどもの本の日」や、99年に講談社が始めた「全国訪問おはなし隊」などへの参加も促した。
 
 それにつれて、自主的な地域活動の広がりもみられるようになっていった。「サポーター講習会」の受講者がおはなし会を開く時に役立てるため、親子が本と触れ合う大切さを記した冊子を、制作。生命保険協会の協賛で子どもの人数分を手配し、配布するなども行われている。
 
 この20年あまりで、「読み聞かせ」という言葉はすっかり一般化し定着した。統計を見ると子どもの読書率は高止まりし、児童書市場は堅調だ。それも、JPICの講座から輩出された受講者たちの、全国的な地道な活動の積み重ねがあってのことだろう。
 
 「こうした活動にはやはりお金がかかります。ですから出版業界内外からの理解と協賛は、今後も長く継続していくために必須であり、また課題でもあります。これからも若い人たちを取り込んで、スマホやタブレットにはない読み聞かせの魅力を子どもたちに伝えていくための工夫も、引き続き考えていきたいと思います」と中泉氏は話している。
 

(飯田一史・ライター)

(2020年3月19日更新  / 本紙「新文化」2020年2月27日号掲載)
飯田一史プロフィール
ライター。 文芸とサブカルチャーを中心に取材・執筆を手がける。著書に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうするの?』(星海社新書)、『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)などがある。
               
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