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第14回
玩具菓子のキャラを書籍化、小1を中心に男子が夢中
 カバヤ食品が2002年から手がけていた玩具菓子『ほねほねザウルス』。書籍化の企画は、岩崎書店の編集者が写真家・山口進の仕事場で、担当者に偶然出会ったことから始まった。そもそもこの玩具は、「子どもは恐竜好きだが、博物館で実際に出会うのはその骨」ということから生まれた。恐竜や古生物の骨の姿をモチーフにした低年齢向けのプラモデルで、現在までに約4000万個を売り上げる。
 
 読みもの「ほねほねザウルス」はそれをもとに、文・ページ構成を担当する大崎悌造(作家)、作画担当の今井修司(イラストレーター)、監修のカバヤ食品ドクター・ヨッシーから成る「ぐるーぷ・アンモナイツ」の手により、08年に誕生した。最新刊第22巻で累計190万部に達する。
 
 もともと玩具自体に物語性はなく、「ティラノサウルス」「トリケラトプス」など種ごとに展開してはいても、読みものに登場するような固有名詞をもつ存在はなかった。一方、読みものではキャラクターを設定。主人公はティラノサウルスのベビー、友だちでトリケラトプスのトップスとステゴサウルスのゴンちゃん。3匹が「ほねほねランド」の様々な場所に冒険の旅に出かけ、ストーリーが展開する。
 
 「自分も冒険している気になれる」「いろんな生きものが出てくるのがおもしろい」「初めて本を読み通せた」「本が好きになった」などと好評だ。
 
 「子どもが恐竜好きになり、博物館通いが始まった」という親からの声もある。月に300〜500通寄せられる葉書を見ると、最多は小学1年生。玩具から入って本に行くケースが多いが、近年は本から入る子も増えている。
 
 レイアウトは独特で、マンガのようにページをコマ割りし、吹き出しもあれば文章を読ませる部分もある。これには、マンガの原作や子ども向け情報誌の記事ページも手がけてきた大崎のノウハウが活かされている。作中に迷路やクイズが挿入されることもある。マンガ隆盛以前に人気を呼んだ「少年ケニヤ」「沙漠の魔王」「冒険ダン吉」などいわゆる「絵物語」の手法も参考にしたという。
 
 章ごとの幕間≠ノは、キャラクターや冒険の舞台などについて、絵を交えた解説が挿入されている。これは初登場の要素についてフォローしたり、本を読み慣れていない子や読み聞かせする親にとっての休憩所≠ナもある。こうした「図解」「図鑑」的な見せ方も、子どもが好きなもののひとつである。
 
 このシリーズは、男の子が好きな「戦い」を描きながらも、過度な暴力表現はないように配慮した、安心して読める娯楽性が高い物語といえる。だが、背景にメッセージを込めることもつねに考えている。
 
「かつて藤子不二雄先生たちが描いたような児童マンガが、現在は非常に少ない。でも子どもには今もそういうものが必要です。『ほねほね』がそのポジションを担ってくれたら。これは作家も同じ気持ちです」(岩崎書店編集部次長・石川雄一氏)
 
 「ほねほねザウルス」が、かつて子どもの心を捉えた絵物語や児童マンガのエッセンスを現代風にリファインして蘇らせ、今どきの男の子を夢中にさせる魅力をもつことは確かである。
 

(飯田一史・ライター)

(2020年5月18日更新  / 本紙「新文化」2020年4月30日号掲載)
飯田一史プロフィール
ライター。 文芸とサブカルチャーを中心に取材・執筆を手がける。著書に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうするの?』(星海社新書)、『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)などがある。
               
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