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第15回
科学で謎解き「科学探偵」シリーズ/読者もトリック当てに挑戦
 2000年代初頭から、分冊の週刊百科「かがくる」「マンガ日本史」など、エンタメと教育を融合した「エデュテイメント」領域の出版を続けてきた朝日新聞出版。同社が、17年末から刊行する小学校3〜5年生向けの読みものシリーズ「科学探偵 謎野真実」(佐東みどり、石川北二、木滝りま、田中智章著 木々絵)は、既刊7巻で14万部となっている。
 
 「この世に科学で解けないナゾはない」を決めぜりふとする天才少年・謎野真実が、ワトソン*のクラスメイト・健太とともに、学校の七不思議や都市伝説を解き明かしていく連作短編集だ。
 
 毎年、累計100万部ほど発行している同社の理科系学習まんが「サバイバル」シリーズの帯に告知を打っていることもあり、同書からの流れで手に取る子どもも多い。読者の男女比率は半々という。
 
 「本文中にはイラストが豊富で、絵の近くのセリフはフォントを大きくするなど、マンガと小説の中間のような読み味の組版。あまり本を読み慣れていない小学生でも、マンガのような感覚で読める。
 
 「読者がまず興味を持つのは、魅力的な事件」との考えを基本に、夜中の学校を歩く人体模型、超能力者によって絵に閉じ込められた女性、悪魔の呪いで消失する島、旅館に現れる逆さ吊りの少女……といったおどろおどろしい謎を設定。映像の脚本家としても活躍する4人の著者が、科学現象を元にしたトリックのアイデアを出し合い、佐東氏が主なストーリーラインを作成後、分担して執筆する。最後に1冊の本としてのすり合わせをして仕上げる、という制作スタイルだ。
 
 「本格科学トリック」を謳っており、毎回「事件編」と「解決編」に物語を分け、事件編で張られた伏線から推理すれば読者にも謎が解けるという、米国のミステリー作家、エラリー・クイーン作品を思わせる構成である。児童書のミステリーには物語性重視の作品が多いなか、本シリーズは「推理して謎を解く」ことに比重を置いている。
 
 こうした趣向に影響を及ぼしたのは、担当編集者である生活・文化編集部の河西久実氏。同氏は子どもの頃、ベストセラー「頭の体操」(多胡輝)などを愛読し、謎解きに挑戦するのが好きだったという。送られてくる読者ハガキによれば、本シリーズでも1〜2時間以上費やしてトリック当てを楽しむ子がいるそうだ。
 
 「1冊の中に4〜7編収録していますが、少なくともその半数は読者が謎を解けるように、難易度を意識しています。また謎解きに必要な部分に関してはヒントを出したり、注意を促したりもします」(河西氏)
 
 今後も年2冊ペースで刊行を続け、ゆくゆくはドリルやマンガへの展開も考えている。一見、古典的な本格推理ものの形式ながら、謎解きと理科的要素がうまく融合。STEM(科学・技術・工学・数学)教育の重要性が説かれる時代にフィットした、きわめて今日的な児童エンタメである。
 
 

(飯田一史・ライター)

(2020年6月11日更新  / 本紙「新文化」2020年5月28日号掲載)
飯田一史プロフィール
ライター。 文芸とサブカルチャーを中心に取材・執筆を手がける。著書に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうするの?』(星海社新書)、『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)などがある。
               
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