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第16回
怖いけれど楽しい「おばけずかん」シリーズ/多メディア展開で読者層広げる
 作=斉藤洋、絵=宮本えつよし「おばけずかん」シリーズ(講談社)は、2020年5月時点で全25巻、累計72万部。一話につき一体のおそろしいおばけや妖怪などが登場する、オムニバス形式の幼年童話だ。毎話、必ずおばけに対する対処法が書かれており、怖いけれど「でも、だいじょうぶ」と読者を安心させるところが特徴的。大人の登場人物はおばけに食べられてしまうこともあるが、子どもは決して被害に遭わないよう、注意も払って作られている。
 
 小学1年生を中心に男女を問わず読まれているが、読者ハガキの戻りは男子の方が多いという。通常、ホラーや怪談には女子人気が高い作品が多い。また、男子が積極的に感想を送ってくる本は稀である。
 
 その点「おばけずかん」は、各巻の表4カバーにその巻のおばけをカードゲームのカードのように並べて見せる、美女のおばけが毎巻登場するなどの工夫が、男子にうける理由となっているようだ。従来の低学年向けの「怪談・おばけもの」と比べると、宮本えつよし氏の絵はポップでコミカルである。
 
 「(作者の)斉藤先生が絵の担当者を決める際、候補作のなかで一番違和感があり、おもしろいと感じたのが、宮本さんの絵だったそうです。おばけなのに気持ち悪くはなく、どこかかわいらしい。そこが当たったのかなと思います」(講談社児童図書編集チーム・松岡智美氏)。
 
 シリーズ序盤は、座敷童や海坊主といった定番・古典的な存在が多く、巻が進むにつれて学校のプールにいる「プール坊主」など、現代的で新奇なおばけの比率が増える。これも新鮮さを感じさせる要因だ。シリーズ中とくに人気なのは、学校やレストランなど、子どもにとって身近な場所を舞台にした巻だという。
 
 文房具やゴミ箱など、子どもたちにとって身近なモノのおばけも登場するせいか、オリジナルおばけを考案し編集部に送ってくる読者も多い。そのため、何度か公式でおばけ募集企画を行っている。
 
 たとえば、ベネッセが進研ゼミ利用者に提供する電子図書館サービス「まなびライブラリー」で行った募集には、約8000通もの応募があった。このコンテストの優秀作を集めて昨年11月に『しょうがくせいのおばけずかん』として書籍化したところ、こちらもよい売行きだそうだ。
 
 20年4月から、テレビ東京系の子ども向け情報番組『おはスタ』内で(7月7日以降)毎週火曜日にドラマが放送され、7月1日からは毎週水曜日にアニメも放送される。講談社ではこれに合わせて、カードゲームやキャラクター図鑑、漢字ドリル、マグネットブックなど関連商品も販売。雑誌「テレビマガジン」で幼児向けに連載し、対象読者を下にも広げる。
 
 もともと、ただ本を読むというより子ども同士で話題にし、自分たちでオリジナルおばけを考案するなど「遊び的」な楽しまれ方をしているシリーズだけに、こうした多メディア展開との親和性は極めてよさそうだ。
 
 

(飯田一史・ライター)

(2020年7月9日更新  / 本紙「新文化」2020年7月2日号掲載)
飯田一史プロフィール
ライター。 文芸とサブカルチャーを中心に取材・執筆を手がける。著書に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうするの?』(星海社新書)、『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)などがある。
               
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