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第18回

チャレンジが生んだヒット作多数/「集英社みらい文庫」

  学校読書調査で小学生に読まれているマンガ誌を見ると、男子は「コロコロコミック」、女子は「ちゃお」がトップで小学館が強い。一方、マンガのノベライズとなると、男子は「鬼滅の刃」(シリーズ累計発行部数43万部)、女子は「絶叫学級」(同98万部)となり、「ジャンプ」「りぼん」掲載を原作とした「集英社みらい文庫」作品が断然強い。
 
  みらい文庫」はほかに、マンガ原作の映画のノベライズにも売れ筋を多く抱える。たとえば「ヒロイン失格」「ひるなかの流星」は、単巻で10万部超、「かぐや様は告らせたい」は5万部。これらの原作マンガは、基本的に中高生以上向けだが、映画では小学校高学年もターゲットに入る。
 
  同じ映画の小説版が、書き手を変えて同社の「オレンジ文庫」や「JUMP jBOOKS」から同時刊行されることもあるものの、書店店頭での売場は異なるため、読者層が食い合うことはない。
 
  2時間の映画を小説化すると、児童文庫1冊分の尺にちょうど収まる。原作マンガを全巻揃えるのは、小学生のお小遣いでは足らないかもしれないが、小説版なら単巻完結のため手が届き、本を読み慣れていない読者でも買いやすい。
 
  「弊社は全社的に、『子どもに本と親しんでもらえなければ出版社の未来はない』との危機感をもって様々な施策に取り組んでおり、映画ノベライズのみらい文庫版もそのひとつです。主演の人気若手俳優やアイドルの表紙写真に惹かれての購入も多く、ふだん本を買わない子たちが、活字に入るきっかけにもなっています。1冊読み切れば『読み切れた!』という嬉しさがあり、『もっと違う作品を読んでみよう』と、さらに本の世界に入ってきてくれるかもしれない。入口としての使命は大きい」(集英社みらい文庫・藤原隆博編集長)。
 
  マンガ原作(の映画)のノベライズに限らず、小学生に人気のTVバラエティ番組「逃走中」や「痛快TVスカッとジャパン」の恋愛編も、「逃走中 オリジナルストーリー」(シリーズ累計発行部数8万8000部)や「胸キュンスカッと ノベライズ」(同15万5000万部)として小説版を刊行する。
 
  「みらい文庫」は恋愛ものに強いというイメージがあるが、「うちには児童文庫では稀有な、読者の9割以上が男子という『戦国ベースボール』や『電車で行こう!』もあります。オリジナルのシリーズ作品を作っていくのが基本ですが、いま売れているものに凝り固まらず、新しいタイプのノベライズ、さらにはスポーツノンフィクションや科学読みものなども含め、いろいろなことにチャレンジするレーベルでありたい」(藤原氏)。
 
  人気俳優を表紙にした、マンガ原作の実写映画のノベライズ自体は、2014年刊の『アオハライド 映画ノベライズ』の前後から確立されていったものだという。つまり、チャレンジなくしては生まれなかった、新たなヒットの手法なのだ。 
 
 
 
 

(飯田一史・ライター)

(2020年10月8日更新  / 本紙「新文化」2020年10月1日号掲載)
飯田一史プロフィール
ライター。 文芸とサブカルチャーを中心に取材・執筆を手がける。著書に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうするの?』(星海社新書)、『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)などがある。
               
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