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第21回(最終回)
連載最終回にあたって、取材で感じた手応えと可能性
 「子どもの本が売れる理由 知られざるFACT」は、今回で連載最終回となった。
 
 児童書市場は好調であるにもかかわらず、未就学児〜小学生向けの本(とくに絵本以外)を取り上げる媒体は少ない。そのためもあってか、取材を申し込むと相手先に喜ばれることが多く、印象的な連載となった(正直なところ、ほかのジャンルでは、取材や記事の執筆自体をここまで好意的に受け取ってもらえたことはない)。
 
 語るべき出版物や取組みはまだあると思うが、今年7月に刊行した『いま、子どもの本が売れる理由』(筑摩書房)におおよそまとめられたこともあり、ひとまず連載を閉じることになった。以降も単発にはなるが、このジャンルについて継続的に執筆していきたいと思っている。
 
 本連載では当初、中高生向けの本も取り上げていく予定だった。ただ、途中で「まずは小学生までを集中的に」と考えたこともあり、ほとんど取り上げることができなかった。そこで、ヤングアダルト世代(=YA、13〜19歳)が本当に読んでいる本を取材・紹介する新連載として、来月から仕切り直しすることにした。
 
 「YA」を謳うレーベルは各出版社にあるが、実際には大人の読者に支えられていることが少なくない。必ずしも中高大学生が中核読者ではないのである。
 
 では、今の日本の10代は実際にはどんな本を読み、何を支持しているのか。小学生向けまでとは、あるいは大人向けの本とは、どんな連続性または断絶があるのだろうか。
 
 たとえばこの10年で定番化し、読者が入れ替わりながらも、ずっと中高生に支持されてきた作家に、山田悠介作品、「王様ゲーム」(双葉社)、「ソードアート・オンライン」(KADOKAWA)、「物語」(講談社)シリーズなどがある。
 
 また、2010年代半ば以降、圧倒的に支持されている作家として住野よる、シリーズでは、「五分後に意外な結末」(学研プラス)がある。基本的には大人の女性向け作品が多いライト文芸でも、「ビブリア古書堂の事件手帖」(KADOKAWA)・「神様の御用人」(同)、「かくりよの宿飯」(同)シリーズなどは、例外的に中高生にも支持されている。
 
 こうした情報は、全国学校図書館協議会による「学校読書調査」や、トーハンの「朝の読書」(学校)で読まれている本」を見ていけば、掴むことができる(残念ながら、どちらも今年には行われなかった/発表されなかったが)。
 
 では、10代に支持されるものとそうではないものには、どんな違いがあるのか。また、小学生と中高生では、各種読書調査の数字や読書推進政策・活動に、どんな違いがあるのだろうか。
 
 実はこういう切り口の記事自体、とても少ない。本の内容に踏み込んで分析したものとなると、さらに減ってしまう。しかし統計上、中学生は小学生に次いで読書冊数が多いセグメントである。市場として見た場合には重要なはずだが、業界でそうとは意識されていないフシもある。
 
 それゆえ1月からの新連載を通じて、「中高生が好きな本」「読書傾向から見える日本の中高生の姿」を総体的に描き出し、出版人である読者の方がたに、その部分に目を向けていただく機会を創出できればと考えている。
 

(飯田一史・ライター)

(2021年1月5日更新  / 本紙「新文化」2020年12月24日号掲載)
飯田一史プロフィール
ライター。 文芸とサブカルチャーを中心に取材・執筆を手がける。著書に『マンガ雑誌は死んだ。で、どうするの?』(星海社新書)、『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)などがある。
               
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