出版業界 専門紙 新文化 出版業界スケジュール 情報掲示板 連載コラム 編集長のページ
第1回 マンガアプリの現在
1日100万超のダウンロード 紙を凌ぐ影響力
 今、マンガビジネスは変わりつつある。そのことを明らかにすべく今号から隔週連載を開始する。
 
 2013年に講談社モーニング編集部とポータルサイトのexciteが組んだ「Dモーニング」を皮切りに、現NHK playartの「comico」、DeNAの「マンガボックス」、小学館裏サンデー編集部の「マンガワン」、集英社ジャンプ編集部の「ジャンププラス」、LINEの「LINEマンガ」などのマンガアプリが次々にサービスを開始した。リリース当初は「マネタイズは大丈夫なのか」「紙と食い合わないのか」といった声もあったが、3〜4年経った今ではそんな次元の話は終わっている。
 
 紙のマンガ雑誌の売上げは落ち続け、コミックスの電子版の売上げが伸び続けていることはいうまでもないが、電子上でのマネタイズ手段は「コミックスの電子化」に留まらない。
 「弊社の売上げの95%はネット上のコンテンツを書籍化した“紙”からです。電子書籍のアプリや広告など、ネットからの売上げは5%にすぎません」
 
 日韓米を中心にウェブトゥーン(ウェブまたはアプリ上で読める縦読みマンガサービス)を展開するレジンコミックスが、連載マンガを1話ずつ少額で販売する各話課金モデルを導入して爆発的に売上げを伸ばしたことをきっかけに、NAVERやカカオページをはじめとするウェブトゥーン界隈はもちろん、日本のマンガアプリにも波及した(各話課金モデルはガラケーの電子コミック時代からアムタスの「めちゃコミック」などで導入されていたが、2014年以降のマンガアプリ市場においては、直接的にはレジンおよび日本でいち早くこのモデルを導入したマンガワンの影響が大きいだろう)。
 
 今では多くのアプリで1話ごとに1回読み切りのレンタルチケットが配布・販売されているが、レンタルチケットの読者は紙や電子のコミックスの読者とはほとんど食い合わない、つまり新たな市場が開拓されたことがわかっている。
 
 さらにこうしたチケットは、スマホ向けゲームの広告動画を再生したり、TSUTAYA DISCASやhuluなどの会員に登録するといった「リワード広告」によっても入手できる場合が大半である。リワードに限らずマンガアプリ上の広告はいくつかの種類が存在し、紙の雑誌とコミックスだけでやっていた時代にはほとんどなかった広告収益が、それなりにアテにできる状況になっている(もっとも、たとえばリワード広告市場は2015年、16年で縮小を続け単価も下がっているため、先行きは流動的だ)。
 
 電子のビジネスモデルの変化だけではない。LINEマンガなどの1000万を超えるダウンロードとDAU(デイリーアクティブユーザー=1日の利用者)100万超えるマンガアプリの存在は、紙のマンガ雑誌を上回る影響力をもつようになった。
 
 「LINEマンガで連載形式で配信されたマンガのコミックスは、リアル書店でも売上げが伸びる」ことが確認され、書店や取次も注目するようになっている。
 
 こうした変化は避けがたいということが改めてマンガ業界の共通了解となった結果、16年から17年にかけて版元発のマンガアプリが続々リリースされることとなった。
 
 本連載では次回以降、マンガビジネス変革のキープレイヤーであるアプリ運営会社や版元、電子取次などへの取材を通じ、変化の輪郭を描いていく。

(飯田一史・ライター)

(2017年1月20日更新  / 本紙「新文化」2017年1月12日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。文芸とサブカルチャーを中心に活動するライター/編集者。著書に『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)、共著に『ビジュアル・コミュニケーション 動画時代の文化批評』『ポストヒューマニティーズ 伊藤計劃以後のSF』などがある。
               
購読の申込みは
↓↓コチラから↓↓
購読お申込み
「新文化」案内
会社概要
アクセス・地図
出版物
お問い合せ
メール送信
リンク

新文化通信社