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第3回 双葉社
出版基準は「わかりやすく、エグいもの」
 双葉社の宮澤震氏は、Yoshiや『恋空』に代表される、いわゆるケータイ小説とそのコミカライズを仕掛けてきた編集者である。「『恋空』のコミックスは全10巻で400万部を突破しました」。
 
 ケータイ小説ブームが落ち着いてきたころ、「他にいい作品はないか」と模索しているなかで、小説投稿プラットフォーム「モバゲータウン」にあった金沢伸明「王様ゲーム」と出会う。ケータイ小説の多くは書籍化する際、横書きで出していたが、『王様ゲーム』は縦書きで、書店では一般文芸の棚に並ぶようなつくりで刊行。「営業と相談して、山田悠介の隣に置かれるように、という戦略を立てました」――ふだん本を読まない10代男女を狙った戦略は的中した。
 
 
 『王様ゲーム』は単行本5冊と文庫5冊合わせて186万部、コミックスは第1シリーズが全5巻で220万部、新シリーズ「終極」が1巻目で25万部のヒット作に成長、映画化もされた。
 
 現在はモバゲータウンの流れを汲むネット小説プラットフォーム「E★エブリスタ」の人気作品の書籍化、コミカライズを手がけている。
 
 岡田伸一『僕と23人の奴隷』はコミカライズが1巻目にして15万部を突破するなど、『王様ゲーム』に続く作品も現れている。メインの読者層は中高生男女。必ずしもネットで読んでいた層が書籍や漫画を買っているのではないという。
宮澤震氏
 
 「ネット小説だけど、Amazonや楽天みたいなネット書店では売れないんです。クレジットカードを持っていない人たちが読者なので。むしろコンビニでよく売れますね」。原作の小説より漫画版の方が売れる点も、読者層を象徴している。
 
「オタクでもなく、ヤンキーでもない人たち――いや、キャバ嬢に『王様ゲーム』を読んでるって言われたこともあるので(笑)、ヤンキーやギャルもなかにはいますが。山田悠介を除けば、その層向けの小説ってないんですよ」。
 
 書籍化する作品を選ぶときには、PV(アクセス数)はもちろん、自身で中身を読んで判断している。基準は「わかりやすくて、エグいもの」。大人向けの本格ミステリーなどでは、既存の作家にはかなわない。だから、その人たちは絶対に書かないが、しかし本を読まない中高生は食いつきそうなものを狙う。
 
 「ケータイ小説と違ってネット小説は『ブーム』ではないと思います。書店に“ネット小説の棚”はありませんから。単品勝負をしているうちはブームじゃないですよね。逆に言えば、『王様ゲーム』『僕と23人の奴隷』に続く作品を“セット売り”して仕掛けていかなきゃ、と準備しているところです」
 
 ネット小説を刊行する双葉文庫の文庫内新レーベルは、今年中に始動する見込みである。
 
 E★エブリスタの人気作品は、双葉社刊の『王様ゲーム』(金沢伸明)をはじめ各社が書籍化、ベストセラーにもなっている。
 
(飯田一史・ライター)
(2013年4月12日更新  / 本紙「新文化」2013年4月11日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。ライター、編集者。コンテンツビジネスに関するジャーナリスティックな活動から創作理論の講義まで、文芸とサブカルチャーを中心に活動を展開している。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に『21世紀探偵小説』(南雲堂)などがある。
               
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