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第8回 ピクシブ
目指すは「ネット上のコミケ」
 “SS”(ショートストーリー)と呼ばれる、TVアニメに登場するキャラクターなどを使って書かれた2次創作の短篇小説がある。ほとんどは数千字程度で、キャラ同士の性愛やネタ的な会話のかけあいを書いたものだ。
 
 商業出版では短篇小説やSSの需要は少ない。しかし、スマホやガラケーで、隙間時間に無料で気軽に読み書きできるマイクロコンテンツとして、SSには莫大な需要がある。書き手も読み手もベースになるキャラを共有しているため、説明の手間を省いて好きな世界に浸れることが人気の一因だ。著作権と1篇の分量の問題から出版社が踏み込むのは難しいが、ネット上の投稿・閲覧プラットフォームでは人気を博している。
永田寛哲副社長
 
 例えば男性向けならArcadiaや2ちゃんねるのVIP板、女性向けならエムペやフォレスト、ナノなどがある。
 
 アニメやマンガが好きな層向けのイラスト投稿・閲覧SNSとしての印象が強いpixivも、実はこのジャンルの大手サイトである。2010年7月に実装された小説部門は順調に成長を続け、今ではpixiv全体のアクセスの15〜20%にあたる月間6.1億PV(ユニークユーザーは650万)を誇る。トータルで約280万作品、今も1日4000弱の作品が投稿されている。
 
 pixiv小説機能を利用しているユーザーの男女比は3対7程度、年齢は10代が25%、20代が60%近く、30代以上が15%(大学生が一番多い)。
 
 ピクシブ株式会社・取締役副社長の永田寛哲氏(写真)は「pixivは最初は『イラストのSNS』でしたが、『ネット上のコミケ』『創作支援SNS』たるべく、次に漫画、そして小説と、サービスを拡張してきました」と語る。
 
 pixivとしてイラストでも小説でも同じ感覚で閲覧できるインターフェースを用意したため(例えば作品名やキャラ名などで辿れるタグ機能など)、話題のアニメ作品の2次創作は小説でも検索しやすく、されやすい。
 
 これが結果としてSSを増加させ、サービス成長を牽引した。
 
 しかし永田氏によれば、今の空気感と共存しつつも、「小説家になろう」や「E★エブリスタ」のようにオリジナル作品が盛り上がり、メディア展開される作品が生まれるようにと、新展開を準備中だという。
 
 「昔は同人の世界でも『漫画が描けないとダメ』だったのが、今では『イラスト1枚でもOK』に変わった。それと同じで、小説も『ライトノベル1冊分書けないとダメ』なのではなく、もっとカジュアルでいい。pixivに投稿していた2次のイラストを出版社の編集者が見たことがきっかけになって、ラノベのイラストレーターになった人は多いですが、同じように、気軽に小説を書き始めてみた人のなかから最終的にプロになる人が出てくれば、また違うフェーズに行くと思いますね」
 
(飯田一史・ライター)
(2013年9月19日更新/ 本紙「新文化」2013年9月12日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。ライター、編集者。コンテンツビジネスに関するジャーナリスティックな活動から創作理論の講義まで、文芸とサブカルチャーを中心に活動を展開している。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に『21世紀探偵小説』(南雲堂)などがある。
               
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