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第9回 金沢伸明氏
3ページを2行に凝縮−−
「早い展開」と「引き」を意識
 ある高校のクラス全員に届いた「王様」からの命令メール。従わない者は次々に凄惨な死を遂げ、生き残った者は不安と疑心暗鬼から追い詰められていくーー。
 
 金沢伸明氏によるサバイバルホラー「王様ゲーム」は、モバゲータウン(現・E★エブリスタ)に投稿されて人気を博し、書籍版(双葉社)はシリーズ累計500万部のヒットになった。サイトを入り口に作品を知った読者が、書店やコンビニで紙の小説やマンガを購入し、逆に紙から入った読者が続きを読むためにウェブにアクセスする。そんな好循環が生まれた同作は、毎日新聞社による学校読書調査でも中高生が読んだ本のベスト5に何年もランクインを続けている。人気の理由を金沢氏に訊いた。
金沢伸明氏
 
 「たまたまモバゲーでケータイ小説の存在を知って、書いてみようかなと。ユーザーは中高生が多かったので、共感してもらえるように学校を舞台にして主人公は高校生。何かゲームをやらせよう、普通のエロい王様ゲームじゃつまんないし、じゃあホラーかな……と」
 
 読者からよく比較されたのは高見広春『バトル・ロワイアル』と山田悠介『リアル鬼ごっこ』だという。同作では死の恐怖に晒された高校生たちの醜い感情の噴出や、ぎょっとするような暴力が描かれる。
 
 「インパクト重視ですね。非日常感を味わいたい人には必要だろう、と。『進撃の巨人』もそうですけど、グロテスクなものって気になって見ちゃうんですよね、人は」
 
 金沢氏は同作の執筆を始めるまで、ほとんど小説を読んだことがなかった。しかしアップを始めた当初から凄まじい反響があり、設定の矛盾の指摘があれば連載を遡って修正し、「アップしたら5分で来る」という読者からの感想や意見を元に執筆作法をマスターした 。
 
 「1日2ページくらいずつ更新するんですが、展開が早くないとみんな飽きちゃうので、他の作家が3ページかけるところを僕は2行で書く。だからこそ短文でも受け手に残るメッセージを込めた言葉を選びます。あとは次が読みたくなるように『引き』を毎回作りますね」
 
 ウェブにふさわしい執筆テクニックを駆使しつつも、書籍化する際は紙の本の読者が求める描写の密度に加筆修正を行っている。「王様ゲーム」は最初にネットに上げるものがコアとなり、本、コミック、映画、ソーシャルゲームに展開するときには各媒体に適したアレンジがなされている。明確な読者像に基づき、メディアやチャネルに合わせた創作技法を駆使してニーズを満たすーー。商売の、そしてエンタメの基本だが、それを徹底している。
 
 金沢氏はさらなる多角化を準備しているほか、「王様ゲーム」以外の新作もエブリスタで執筆中だ。「なかなかこういうタイプの作品はいい設定を思いつくのが大変なんですけど、あと1作くらいはやれるかな、と思っています」。
 
 
(飯田一史・ライター)
(2013年10月11日更新/ 本紙「新文化」2013年10月10日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。ライター、編集者。コンテンツビジネスに関するジャーナリスティックな活動から創作理論の講義まで、文芸とサブカルチャーを中心に活動を展開している。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に『21世紀探偵小説』(南雲堂)などがある。
               
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