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第10回 CRUNCHERS
文芸系初の投稿プラットフォーム
 CRUNCHERS株式会社が運営する小説投稿・閲覧プラットフォーム「CRUNCH MAGAZINE」は2013年8月にローンチされ、2カ月半で226人の会員(作家)が登録し、500弱の投稿作品がある。月間PVは20万前後(ユニークユーザーは1万から2万)。他の小説投稿プラットフォームとの違いは、純文学寄りの作品が目立つことだ。
 
 「エンタメ系のファンタジーやホラーが人気のプラットフォームはあっても、文芸系の人が集まる場所はなかったんです」と語るのは、サービスを開発・運営する同社代表取締役の石井大地氏。石井氏は河出書房新社が主催する「文藝賞」受賞作家の今村友紀でもある。文学が先細りしていくことへの危機感が、今村氏を突き動かした。
石井大地代表取締役
 
 「文芸の世界のいいところを受け継ぎつつ、問題点を改善しようと。たとえば私自身、紙の雑誌や単行本で作品を発表しても、いただける感想や批評が少なく、何が良かったのか、悪かったのかがわからなかった。だから『CRUNCH MAGAZINE』では発表作品に対して、まず読まれること、そしてなるべく速く、何かしらのコミュニケーションが生まれるように意図して設計や運営を心がけています」
 
 同サービスでは、読者・評者による反応を「いいね!」ボタンやお気に入りリストへの登録、レビューなどに細分化し、気軽なアクションを促す。また、レビューを書かれた側がレビュアーに対して評価を返すこともできる。
 
 アクセス数はランキングに一切反映されないが、こうした会員同士による反響の質・量を組み合わせることで、作品・作家のランクが決まる。これは、多くの文学賞が、単純な売上げや人気投票ではなく、信頼できる作家や批評家によって選出されることに倣っているーー相互の“評判”や“信頼”が定量的なデータとして扱われ、可視化されている点が異なるが。
 
 また、同サービスには広告は入っておらず、有料会員制度も今のところない。「そこにこそ意志を感じてほしい。会社としては他の事業で収益は上げており、『CRUNCH MAGAZINE』をやみくもにスケールさせて儲けようとは考えていません。文学について真剣に考える人間が切磋琢磨しあえるコミュニティとして大切に育てていきたい。弊社の経営会議でもいつも話題になるのは、小説を書かずにはいられない人たちは何を糧にして生きているのか。その想いに応えるにはどんな機能、どんな運営が必要なのか。そういうことです」
 
 現在、同サイトは、投稿作品にはほとんど複数のコメントやレビューがつくという、稀有な小説プラットフォームになっている。「ほとんどの会員がほぼ毎日アクセスし、新着の投稿作品があると競うように読み、刺激を受けて感想や作品を書く場になっています」
 かつての文芸誌や文芸同人誌が担っていた機能をウェブ上に復活させた「CRUNCH MAGAZINE」には、いま、熱気が充満している。
 
 
 
(飯田一史・ライター)
(2013年11月18日更新/ 本紙「新文化」2013年11月14日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。ライター、編集者。コンテンツビジネスに関するジャーナリスティックな活動から創作理論の講義まで、文芸とサブカルチャーを中心に活動を展開している。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に『21世紀探偵小説』(南雲堂)などがある。
               
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