出版業界 専門紙 新文化 出版業界スケジュール 情報掲示板 連載コラム 編集長のページ
第11回 橙乃ままれ氏(上)
他人の「悪意」を見ない
 アニメ化もされた人気作品「まおゆう魔王勇者」と「ログ・ホライズン」ーー前者は2ちゃんねるのVIP板に投稿され、後者は「小説家になろう」に連載中であり、その書籍版(KADOKAWA エンターブレイン)はともに累計70万部を記録している。
 
 両作の著者・橙乃ままれ氏は、創作経験はあったものの小説新人賞へ応募したことはなく、「まおゆう魔王勇者」書籍版を何冊か出すまでは、プロの作家になろうと思ったことすらなかった。
 
 「当時、身体を壊して休職状態だったんですが、『そろそろサラリーマンになろうかな』と書籍の担当さんにつぶやいたら『ふざけたこと言ってないでさっさと書け』と(笑)」
橙乃ままれ『ログ・ホライズン7 供贄の黄金』
(KADOKAWA エンターブレイン)
 
 以降、専業作家として活動している。「『まおゆう魔王勇者』も『ログ・ホライズン』も、既存のライトノベルの新人賞では通らなかったでしょうね。中高生向けのフォーマットからは外れていますし、書くなら長い話を書きたかったーー文庫1冊でまとまるような話は書けなかったですから」とも語る。
 
 「『なろう』の作家さんでメインの書き手は20代中盤くらいだと思いますが、それとは別に僕と年の近い35〜40歳くらいに別の塊がある。中高生のときにソノラマ文庫や早川書房の海外ファンタジー、まだライトノベルという言葉もなかった時代の富士見ファンタジア文庫などを読んでいた人たち」
 
 その世代の人たちが書きたい&読みたいタイプの小説は、今のラノベの主流とは異なる。だから作品の受け皿として、ネットの小説プラットフォームが機能した。
 
 「佐島勤さんの『魔法科高校の劣等生』には同世代感を覚えたし、あの作品が人気になるなら、と思って『なろう』を選んだ部分もある。インターフェースが使いやすかったことも大きいです」
 
 同じネットでも、2ちゃんねるとなろうでは読者の反応は全く異なり、また、紙の書籍版から読みはじめた人、アニメから入った人でそれぞれ感想や振る舞いが違うという。「2ちゃんねるとなろうというノリが全然違う場を経験したのはよかったですね。批判や罵倒めいたコメントでも『場の空気』で言っていることも多いんだな、ということも、2つ以上のプラットフォームを見たからわかったことでした」。
 
 橙乃氏いわく、ネットでの執筆に向いている人は「筆が速くて、他人の悪意を見ない人」。きつい言葉を投げかけられてもそこに悪意を見ずにへこたれないハートの強さがあり、読者からのフィードバックを受けて次々書いていける人ならば、どんどん技術的にも向上していくという。
 
 肯定・否定を問わず、あらゆる反応から学び、次に活かしていけることーーそれがネット時代の創作者に求められる資質なのだろう。
 
 ※次回につづく
 
(飯田一史・ライター)
(2013年12月13日更新/ 本紙「新文化」2013年12月12日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。ライター、編集者。コンテンツビジネスに関するジャーナリスティックな活動から創作理論の講義まで、文芸とサブカルチャーを中心に活動を展開している。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に『21世紀探偵小説』(南雲堂)などがある。
               
購読のお申込は
↓コチラから↓
購読お申込み
「新文化」案内
会社概要
アクセス・地図
出版物
お問い合せ
メール送信
リンク

新文化通信社