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第13回 くるひなた氏
キャラクターありきの「蔦王」
 「ネット小説は女性向けも活況を呈している。それらを書籍化する版元の代表格アルファポリスは、ファンタジーレーベル“レジーナブックス”などを擁し、書籍化を視野に入れた賞を定期的に実施する。天真爛漫な16歳の少女が異世界へとトリップし、彼の地の若き元・皇帝に寵愛されるという『蔦王』(累計11万6000部)などで人気のくるひなた氏も、2010年に賞に応募、デビューした作家である。
 
 
 自宅で仕事をするようになり時間の余裕ができ、ネット小説の存在を知って、2次創作から始めた。それまで小説執筆経験はなかったという彼女の本業はイラストレーター。小説よりも少女漫画、なかでも遠藤淑子作品を好んできた。
 
 ファンの多くは女性だが、男性ファンも付いている(同じレジーナから刊行されている如月ゆすら『リセット』の男女比は3対7とのこと)。
 
 
 『蔦王』はキャラクターをまず絵に描いて作り、設定や大まかな筋書きを考えてから書き始めた。「毎回途中で脱線して、最初の計画とは全然違うものにできあがることもしばしばでした。読者から感想欄にいただいた言葉がヒントになって道が開けたということもあります。ただ、ネットでは公開済みの話でも遡って修正できるので、幾分気楽です」。
 
 ネットに投稿する際に気をつけていることは3つ。それぞれのページの文字数にあまり差が出ないようにすること。続きを読みたくなるような「引き」を意識すること。更新のペースを早くすること。「なかなかそう上手くいかないのが悩みどころではあります」。
 
 ネット小説の作家であり読者でもあるというくる氏にとって、その魅力とは? 「やはり、気軽に読めて、気軽に読んでいただけることが一番の長所かと思います。紙の本を衝動的に買った場合、その内容が自分の好みと違ったり面白くなかった場合がっかりしますし、お金がもったいないなと感じるかもしれません。ネット小説の場合は、読み進めてみて好みに合わないと思ったら読むのをやめればいいのですから、懐の痛みに憤りを感じることもありません。
 
 また逆に、あまり興味がない分野の小説でも、ふと読んでみると驚くほど面白いものに出会えるかもしれません。ただ一つ、ネット小説に関わる上で覚悟をしなければならないと感じるのは、お気に入りの作品が見つかってのめり込んだとしても、それが完結まで書かれるかどうかが保証されていないということです」
 
 2014年も書籍刊行予定のほか、小説投稿・閲覧サイト「小説家になろう」連載中の作品を完結に向けて進めている。「目標としましては、紙の本の執筆の合間に少しでも多くネット上でも小説を書いていくことです。とにかく、書けるだけ書いて、それを楽しめるような1年にしたいと思っております」。
 
 
(飯田一史・ライター)
(2014年2月18日更新/ 本紙「新文化」2014年2月13日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。ライター、編集者。コンテンツビジネスに関するジャーナリスティックな活動から創作理論の講義まで、文芸とサブカルチャーを中心に活動を展開している。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に『21世紀探偵小説』(南雲堂)などがある。
               
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