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第14回 スターツ出版
「変化の芽」を社内共有
 スターツ出版といえば近年ではOZmall事業の印象が強いが、YOSHIや『恋空』を代表とする2000年代のケータイ小説ブームの牽引役でもある。同社は現在も女子中高生向けのケータイ小説サイト「野いちご」と大人の女性向け小説投稿・閲覧サイト「ベリーズカフェ」を運営、人気作品を自社で文庫化している。
 
 編集者としてケータイ小説の書籍化を初期から手がけ、現在では同社の書籍コンテンツ部と販売を統括する松島滋氏に訊いた。
 
 「ケータイ小説は08年頃から潮目が変わり、サイト上では『恋空』的な泣けるものより軽めの学園恋愛ものが人気になっていました。ただ書籍の編集部には『本では売れないだろう』という思いこみがあって、しばらく書籍化には消極的でした。
昨年下期、ベリーズ文庫で最も売れたという
『週末シンデレラ』(春奈真実著);
 
 でも、試しに軽めの恋愛ものを出してみたら……売れたんです。以来、『常に新しいものを』と肝に銘じ、サイトの運営チーム、書籍の編集部、販売部で『変化の芽』を共有しています。最近ケータイ小説では学園ホラーが流行っていますね」
 
 野いちごからベリーズカフェを派生させて別サイトにしたのは、OLや主婦層の投稿が増え、アクセスランキング上位に不倫や社内恋愛ものがのぼるようになってきたため。ベリーズカフェのユーザーは20代が42.9%、30代が31.2%、40代17.4%。月間PVが1.4億、アプリのダウンロード数は6.8万で現在も伸長中(野いちごは月間3.5億PV、アプリが33万DL)。
 
 「ケータイ小説では作家に会いによく地方に飛んでいましたが、ベリーズカフェでは都市部在住の方が多い。読者も作家もケータイ小説とはまた別の、新しく入ってこられる人が中心です」
 
 売上げは紙の書籍が主軸ながら、広告や電子書籍も年々伸びている。
 
 「ベリーズ文庫は昨年4月創刊ですのでこれからですが、ケータイ小説文庫の方は日販のデータでは書店で年に平均3.2回転しています。つまり『外す作品は少ないが初速型』と従来は見られがちでしたが、じつは回転率がよく、実際、重版率も高い。
 
 また、ユーザーアンケートでは8割が『サイトに掲載された小説の書籍版を買ったことがある』と答えており、しかも併読した本は野いちごで固まっている。それもあって書店に棚セットを送ってみたところ、売上げがグンと上がり、『棚ができると売れる』と認識いただけるようになってきました」
 
 版元が自らサイトを持っているからこそ、サイトと紙で一貫したブランド価値を提供でき、ゆえにロイヤリティの高いユーザーが生まれる。それが同社の強みだろう。
 
 「もともとランキングだけでなく、編集者が『これは』と思った作品は『特集』といったかたちで推薦してきましたが、今後はよりサイトと紙の融合を突き詰めていきたいですね」
 
(飯田一史・ライター)
(2014年3月14日更新/ 本紙「新文化」2014年3月13日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。ライター、編集者。コンテンツビジネスに関するジャーナリスティックな活動から創作理論の講義まで、文芸とサブカルチャーを中心に活動を展開している。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に『21世紀探偵小説』(南雲堂)などがある。
               
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