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第16回 角川ビーンズ文庫
「曲と物語の連動」意識
 2001年創刊の角川ビーンズ文庫は、『少年陰陽師』『彩雲国物語』『まるマ』シリーズといったヒット作を送り出してきた。近年では、ia名義でネットで活動していた糸森環らの小説、HoneyWorks「告白予行練習」のノベライズ(ボカロ小説)など、従来とは別のルートからの話題作も生んでいる。
 
  副編集長の越川麗子氏によれば「視野を広げながら書き手を探していたときに、担当のひとりが『iaさんは書き手としてすばらしいし、ネットでものすごくPV数を持っている。うちのレーベルにも合うはず』と」。
 
 ビーンズ刊行の女性向けネット小説の読者は20代以上。ネット小説では異世界トリップもののように流行りがあるが、新人賞では作品単位で評価する。両者は作品を世に出す手段も違えば、対象年齢に応じたイラストや刊行時の売り方も違う。編集長の中村昭子氏いわく「もともと主人公が男性のものも女性のものもあるのがビーンズ。『総合レーベル』として色いろなタイプの作品をやれればと」。
 
 
 とはいえ“何でもかんでもアリ”ではない。越川氏によると「ボカロ関連を始めるときには『単発ではダメ。ラインアップで見せていけなければ、レーベルとしてはやるべきではない。どれだけ続けられるか、その根拠は?』ということは、社内で相当揉みました」。
 
 ボカロ小説に注目したきっかけは、12年に出た『カゲロウデイズ』(KCG文庫)。「最近ではライトノベル全体に読者の年齢が上がっているなか、『カゲロウデイズ』は圧倒的に10代前半から15、6歳の若い層が買っていました。だから、これはやるべきだと。ただ、ボカロ小説はPHP研究所などが先に手がけていましたので、単に再生数の多い順に声をかけてもバッティングするし、ラインアップの統一感もなくなる。それは意識しながら詰めていきました」
 
 独自の切り口を考えた結果、他社のボカロ小説のラインアップとは毛色が違う曲を原作にし、曲が投稿されてから比較的すぐにP(プロデューサー/楽曲投稿者)にコンタクトを取り、装丁は10代前半の女子向けにして刊行。ヤマコによる少女漫画のようなポップなイラストが表紙の『スキキライ』(HoneyWorks原案、藤谷燈子作=7万5000部)を皮切りに、山田悠介的なデスゲームものにアレンジした『脳漿炸裂ガール』(れるりり原案、吉田恵里香作=累計15万部)などがスマッシュヒットとなった。
 
 いずれもニコニコ動画に流れる弾幕(コメント)を参考に、曲のファンがどこに反応しているのかに注意し、曲の盛り上がりと小説にしたときの物語展開の連動を意識しているという。14年2月刊行の小説『告白予行練習』(累計18万部)はHoneyWorksのCDアルバム『ずっと前から好きでした。』の発売とタイミングを合わせるなど、作り方・売り方のノウハウも蓄積されてきた。
 
 「どうしても女性向けライトノベルは書店でも奥まった位置に置かれることが多いので、もっと目につく場所に置いてもらえるような本づくりや販売面での仕掛けをしていきたいなと思っています」(越川氏)
 
(飯田一史・ライター)
(2014年5月28日更新/ 本紙「新文化」2014年5月22日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。ライター、編集者。コンテンツビジネスに関するジャーナリスティックな活動から創作理論の講義まで、文芸とサブカルチャーを中心に活動を展開している。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に『21世紀探偵小説』(南雲堂)などがある。
               
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