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第19回 マイクロマガジン社
「誠意とアイデア」で勝負
 2014年5月末にネット小説を書籍化する「GCノベルズ」を始動させたマイクロマガジン社。同社は、ゲーム関連書籍や漫画投稿サイト「マンガごっちゃ」の運営およびウェブ漫画の書籍化を手がけており、近年のスマッシュヒットにはアニメ化された『琴浦さん』や『蒼い世界の中心で』などがある。
 
 GCノベルズ創刊ラインアップの『転生したらスライムだった件』は、ゼネコンに勤めるサラリーマンの主人公が事故死して目覚めると、ファンタジー世界でスライムになっていたという異色作。刊行2カ月で3刷と好調、ほかのタイトルも全点重版している。
 
 「面白いものはどんどんやっていこうという編集方針でしたので、個人的にも部としても『やりたい!』と声をあげました。ちょうど書店さん的にもタイミングがいい時期の参入になりました」とマンガごっちゃ編集部の伊藤正和氏は語る。GCノベルズがB6ソフトカバーでの刊行になったのは、同ジャンルの先行者であるアルファポリスやMFブックスの伸長を鑑み、B6棚を増やそうという書店の熱を受けてのこと。
 
 「読者のイメ―ジは30代以上の、十分大人なのに『大人になりたくねえな』と言ってしまうような――まあ、僕がそうなんですが(笑)――方かなと。レーベルとしては『濃さ』を意識していきたいんです。他社が、ブランドとして統一しなければいけないものがあるから手を出しにくい、あるいは、読むひとを選ぶかもしれないけど好きな人は熱狂する、そんな個性的な作品を狙いたいですね」
 
 『転生したらスライム〜』は、意外にもマイクロマガジン社以前にはどこからも書籍化の打診がなかったという。「僕は『これだ!』と思って声をかけたんですが……。でも刊行してみたら売上げは好調で。ひょっとしてそういう作品も多いんじゃないかなと」。
 
 ヒロインがいなかったり、主人公が「気持ち悪い」と読者に評されるようなクセのある作品は、わかりやすいエンターテインメントの類型に収まっているものよりも版元として企画を通すのに勇気がいる。あるいは、ウェブ連載であるゆえにクオリティに波があり、本としてパッケージングするには編集・改稿作業の工数がそれなりに必要だと思われる作品も、及び腰になりがちだ。
 
 「うちはたとえばKADOKAWAさん系と比べると知名度もありませんから、1冊1冊、編集作業にしろ作家さんとの打ち合わせにしろ、誠意でアピールするしかない。作品を読み込んでのオファーに始まり、1冊の本にまとめるための改稿のアイデア出し、イラストや装丁のイメージのすり合わせなど、非常に時間をかけてやっています。点数ありきではなくて1冊ずつ、読者にも作家さんにも損がないものを作ろうと」。
 
 編集長の関戸公人氏に今後の展望を訊いた。「編集部の人員増強、および刊行作品のコミック化を考えています。社としても『琴浦さん』以降、出資を含めメディアミックスに対して積極的になっていますので、映像化も検討していきたいですね」
 
 
(飯田一史・ライター)
(2014年9月5日更新/ 本紙「新文化」2014年9月4日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。ライター、編集者。コンテンツビジネスに関するジャーナリスティックな活動から創作理論の講義まで、文芸とサブカルチャーを中心に活動を展開している。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に『21世紀探偵小説』(南雲堂)などがある。
               
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