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第20回 PHP研究所
フリーゲームの小説化で成功
 ニコニコ動画やYouTubeといった動画サイトで「ゲーム実況」が活況を呈している。文字通りPCやTVでゲームをしながらプレイヤーが実況中継する動画が、投稿数・再生数ともにうなぎ登りだ。
 
 有名実況主が刊行した書籍はベストセラーになり、実況によって有名になった「フリーゲーム」と呼ばれる、ネット上で無料で配布されている自主製作ゲーム(自作ゲーム)のノベライズも好調だ。これらはいわゆる「ネット小説」ではないが、ネット上で無料で触れられる作品を有料の書籍にするというビジネスモデルは同じである。
 
 ボーカロイドでつくられた楽曲を小説化する「ボカロ小説」に続き、このジャンルのパイオニアはPHP研究所だ。第1弾の『青鬼』小説版はシリーズ累計34万部を突破、同ホラーゲームは今夏映画化もされ大ヒットした。謎めいたダークファンタジー『ゆめにっき』の小説版が単巻で7万部と続く。
 
 「『青鬼』や『ゆめにっき』は、ゲームのダウンロード数は当時それほどでもなかったんですが、実況動画の再生数や投稿数に注目していました。『ゆめにっき』はイラスト投稿サイトpixivでの2次創作の数も多く、ゲームプレイ自体以外でも楽しんでいる人たちが裾野を広げていたんだと思います」とエンターテインメント出版部の伊丹祐喜氏は語る。
 
 判型は同社のボカロ小説と同じくB6判ソフトカバーだが、購買層はボカロ小説とは必ずしも同じではない。
 
 「ボカロは圧倒的に中高生女子ですが、こちらはゲームによってまちまちですね。『青鬼』は男性の方が少し多いくらい、『ゆめにっき』は男女半々。ゲームでは謎だった部分を小説で書くと、評判がいいですね」
伊丹祐喜氏
 
 ボカロ同様にアニメイトのような専門店でも売れるが、地方の一般書店やTSUTAYA、未来屋書店のような郊外店でも遜色ない動きだという。Amazonで書籍総合3位、ライトノベルのカテゴリでは1位、企画当初8000部だったが刊行後2週間で3刷3.5万部と急速な勢いで売れている『歪みの国のアリス』は、同社・小野くるみ氏の企画である。
 
 「これは2006年にリリースされた前後編で400円の有料アプリゲームなんですが、今20代中盤の人たちが高校か大学のときにガラケーで夜寝る前とかにプレイしていたんですね」
 
 同ゲームはスマホにも移植されているが、書籍の購買者は20代の女性が圧倒的に多い。「10代のあいだで動画サイトで流行」ということにこだわらず、同社は“ゲーム”という軸で企画の幅を広げていくようだ。2人に今後の展望を訊いた。「最近ではスマホ向けゲームでも小説とマッチしそうなストーリー性のあるものが増えてきているので、そのあたりに注目していきたいですね」(小野氏)。「詳細はまだ話せませんが、ゲーム関連では年齢がやや上の層向けの新企画を予定しています」(伊丹氏)。
小野くるみ氏
 
(飯田一史・ライター)
(2014年10月6日更新/ 本紙「新文化」2014年10月2日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。ライター、編集者。コンテンツビジネスに関するジャーナリスティックな活動から創作理論の講義まで、文芸とサブカルチャーを中心に活動を展開している。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に『21世紀探偵小説』(南雲堂)などがある。
               
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