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第22回 学研パブリッシング
ウェブ連動の謎解き本「エンドゲーム」
 宇宙からやってきた謎の知的生命体が、地球人類の古代民族の末裔である少年少女12人を召喚して告げる。世界のどこかに隠されている3つの鍵を順番に見つけた民族だけを残し、地球人を全滅させる、と。
 
 アメリカのヤングアダルト小説で人気のデスゲーム/ディストピアSFの流れを汲んだ『エンドゲーム』は、しかし、ただの小説ではない。SNS「Google+」上の特設ページから登録すると、読者がプレイヤーとなって50万ドルの賞金が懸けられた全世界同時のウェブ連動の謎解きゲームに挑戦できる。
 
 書籍内の画像や数字に謎が隠されており、ヒントは書籍に埋め込まれたURLをクリックすると表示される地図や動画などに隠されている(電子書籍版だとアクセスが容易だが、紙ユーザー向けに日本語版公式サイト上でもURLが一覧できる)。また、ウェブ上でサブストーリーが随時更新され、本編の前日譚的な内容のARG(代替現実ゲーム)、位置情報ゲーム「イングレス」のスタッフが制作する2015年リリース予定のモバイルゲーム、16年公開予定の映画とも連動していく。全3巻予定。2巻は2015年に刊行予定だ。
 
 翻訳出版を手がけたのは学研パブリッシング、アニメ雑誌「メガミマガジン」編集部所属の上原康仁氏だ。「弊社は近年アニメに出資するなどコンテンツビジネスに力を入れており、その一環として手を挙げた次第です」。
上原康仁氏
 
 小説の翻訳は金原瑞人氏と井上里氏が手がけている。「両先生には無理を言って、少年マンガやライトノベルを思わせる文体で『なるべく読みやすく』とお願いしました」。ウェブ上に次々と英語でアップされる動画やテキストといった追加コンテンツの日本語への翻訳は、上原氏自身がTwitter上でリクエストを受け付け、随時行っている。
 
 「サイトの登録や謎解きの根幹は日本語さえできれば可能ですし、今から登録してもまだ間に合います。ただ、参加にあたってハードルになりそうな言語の壁を取り払うために、謎解きのヒントになっている部分や人気キャラのサブストーリーについては翻訳を提供していきたいなと。『リアル脱出ゲーム』などが好きな方ならハマると思いますので、ぜひ挑戦してください」
 
 これまでの出版では売り切りの「パッケージ型」コンテンツが主流だったが、ウェブサービスやモバイルゲームではユーザーの反応を見ながら追加コンテンツが順次投下されていく「運用型」コンテンツが主流である。『エンドゲーム』も本質的には後者だ。
 
 世の趨勢は「運用型」にシフトしており、出版ビジネスも「訳して終わり」「出して終わり」ではない、ウェブで随時更新していくものが増えていくだろう。そのノウハウ獲得は必定だ。「単純に出せるお金の多寡で勝負するのではなくて、他社とどうやり方を差別化できるかだと思うんです。『ウチならこうやれる』という提案ができるようになったら、今後もモノを作り続けていけるのではないでしょうか」
 
 
(飯田一史・ライター)
(2014年12月12日更新/ 本紙「新文化」2014年12月11日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。ライター、編集者。コンテンツビジネスに関するジャーナリスティックな活動から創作理論の講義まで、文芸とサブカルチャーを中心に活動を展開している。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に『21世紀探偵小説』(南雲堂)などがある。
               
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