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第23回 ポプラ社
小学生女子向けボカロ小説で11万部
 ポプラ社は2013年12月発売の『桜前線異常ナシ』以来、ポプラポケット文庫で初音ミクや鏡音リン・レンといったクリプトン・フューチャー・メディア製ボーカロイドを使った楽曲を原作にしたボカロ小説を展開している。14年12月時点で6点、累計11万部を発行。作品にもよるが、主な読者層は小学校高学年女子だという。ポプラ社児童書編集局第二編集部コミック担当チーフの崎山貴弘氏に訊いた。
 
 「元々、私が弊社の子会社であるジャイブに所属しておりまして、初音ミクブームの初期(07年末)から、ミクのキャラクターデザインを手がけたKEIさんによるコミックス『メーカー非公式 初音みっくす』などを発行していたんです。漫画のアンケートの返りを見ていると、最初は男性が多かったのが11年頃を境に、小中学生女子からしか返ってこなくなったんです」
 
 
 12年春に初音ミクを使った卒業ソング『桜ノ雨』がPHP研究所から小説化され、中学校の司書が取次会社に注文していることを知り、児童小説での参入を決めた。
 
 「小説化をオファーする楽曲の基準は、まず小中学生が好んでいるもの。小学生だとスマホやタブレットではなく、Wii Uを使ってテレビ画面でYou Tubeを見ていたり、ボーカロイドが出てくる音楽ゲーム『Project DIVA』で曲を聴いていたりしますから、必ずしもニコニコ動画上の再生数や、楽曲の投稿時期では決めていません。短期的な流行より『スタンダードになりつつある楽曲』を選んでいます。それから、性的な内容、過激なものは避けています」
 
 他社のボカロ小説ではクリプトン以外のメーカーによるボーカロイド(GUMIなど)や、作曲者オリジナルキャラクターが登場するものもあるが、ポプラ社のボカロ小説には、ミクやリン・レンといったクリプトン製ボーカロイドしか出てこない。
 
 「小学生の女の子はまず初音ミクから、それも見た目から入りますからね。『かわいい!』って」。確かに、ボーカロイド楽曲を聴いて「タグ」や「P」といった情報を気にするのは、ネットリテラシーと知識欲が発達した中高生以上の聴き方だろう。
 
 「ボーカロイドによる新曲がネット上に絶えず上がっている現在、楽曲の流行すたりや、好みの多様化も当然起きているわけです。我々が提供したいのは、その興味が分かれていく前の『入口』のところです」
 
 ボーカロイドは小学生〜20代のあいだでは当り前に存在するものになり、消費の仕方も多様化してきた。CDや小説を出せばなんでも売れた時代は終わり、「誰向け」なのかが強く問われる時期になってきた。ポプラ社は“小学生のボカロの聴き方・楽しみ方”に寄り添いターゲットを絞りながら、ラインアップは小説以外にも横展開していくようだ。14年11月に『きせかえ初音ミク MIKUのおしゃれBOOK』『初音ミクシールブック』を刊行。出たばかりだがそれぞれ1.5万部、2万部と好調な滑り出しである。
 
 
(飯田一史・ライター)
(2014年12月12日更新/ 本紙「新文化」2014年12月11日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。ライター、編集者。コンテンツビジネスに関するジャーナリスティックな活動から創作理論の講義まで、文芸とサブカルチャーを中心に活動を展開している。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に『21世紀探偵小説』(南雲堂)などがある。
               
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