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第24回 TSUTAYA
本部施策で売上倍増
 TSUTAYAに加盟するブック取扱店では、ネット小説系書籍の売上げが2011年から伸び始め、13年7月には全店で展開することを決定した。それまで店舗ごとに展開位置は様々だったがデータ分析の結果、一般文芸(国内文芸書)の売場に陳列するべきと判断。(株)TSUTAYA商品本部BOOK部TBN BOOK MDの安本朋幸リーダーはこう話す。
 
 「表紙だけ見るとライトノベル文庫と読者が近いように見えるかもしれませんが、一緒に買われている本はむしろ国内文芸などの一般書でした」
 
 ボカロ小説は10代男女、KADOKAWAなどから刊行されている男性向けネット小説は20代〜40代前半、アルファポリスなどが刊行する女性向けは20代〜40代の女性に支持されている。ボカロ小説は購買層がお小遣いが限られた中高生ということもあり初速はゆるやかだが、20代以上向けの作品は発売から1〜2週間で大半の売上げをつくる。30代以上の読者も多いジャンルのため、突然飽きられて「ブーム」として終わっていくものではないだろうとの判断が、棚を作ったきっかけだという。
 
 14年1月にはボカロ小説のフェアを、6月には小説投稿プラットフォーム「小説家になろう」と組んでブック取扱店750店舗強のうち約半数でフェアを実施。ひとつの「ジャンル」としての認知づけを促した。
 
 それまで一般文芸書は棚の回転率が著しく低下し、売上げも厳しい状況だった。だが、ネット小説はシリーズ複数巻での購入需要が大きく回転率が高いジャンルとして存在感を増し、14年末までに売上げは約2倍に伸長。現在では金額ベースで文芸書の全売上げの25%以上を占める。
 
 「このジャンルは1巻目からの継続購買率が高いのが特徴です。刊行ペースが速いこともあるのでしょうが、通常ですとシリーズ2巻目以降は1巻より売上げが下がるはずが、その割合がなだらかです」
 
 TSUTAYAでは、人気シリーズが店舗の棚からごっそり抜けることを防ぐため、本来あるべき在庫を過去の実績から分析し、本部側で版元へ定期的に発注して売場を最適化している。
 
 「現状ではファンタジーをはじめライトノベル文庫に近しいジャンルがウケています。ですが、ウェブを使って作り手と受け手を結びつける新しいかたちとして定着してきましたし、今後はより従来の一般文芸に近いジャンルの作品も増えるのかなと」
 
 TSUTAYAではこれまでもタイトルごとに店舗オリジナル特典をつけるなどの施策を行ってきた。ウェブで触れられるものでも「書籍を“モノ”として所有したい」というユーザーニーズを満たし、付加価値を増すために版元や各種プラットフォームと提携しながら、今後も売上げ規模拡大を模索していくという。
 
(飯田一史・ライター)
(2015年3月2日更新/ 本紙「新文化」2015年2月26日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。ライター、編集者。コンテンツビジネスに関するジャーナリスティックな活動から創作理論の講義まで、文芸とサブカルチャーを中心に活動を展開している。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に『21世紀探偵小説』(南雲堂)などがある。
               
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