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第27回 ウェルザード氏「カラダ探し」
2社が共同プロモーション
 夜の高校で、バラバラにされた友人の少女のカラダを探すことになる主人公たち。カラダをすべて探さないかぎり同じ1日がループしつづけ、謎の存在「赤い人」にくりかえし殺されることになる――。
 
 こんなあらすじのウェルザード作『カラダ探し』は、小説投稿プラットフォーム「E★エブリスタ」にて連載され、次いでスターツ出版が運営するサイト「野いちご」で掲載。その後、スターツ出版のケータイ小説文庫ブラックレーベル¢n刊第1弾として2013年8月に書籍版の刊行がスタートした。ユーザー層が異なる2つのプラットフォームが共同プロモーションを展開し、いずれでも人気を博したタイトルは珍しい。
 
 「『カラダ探し』は、E★エブリスタに連載されるやいなや人気となり、毎月行われていた『E★エブリスタ賞』という投稿イベントで優秀賞を受賞したんです」(エブリスタ・川崎龍一郎氏)。それに目をつけたのが、ローティーン向け恋愛小説とは別ラインを立ち上げようとしていたスターツ出版だった。
 
 「新レーベル創刊にあたり作品を探していたのですが、『これだ!』というものが見つけられませんでした。しかし『カラダ探し』を初代担当編集の倉持――ちなみに『恋空』の編集担当でもあります――が提案してきた時には、全員一致で書籍化に賛成しました。キャッチーで、怖いのに、読むと重要なことに気づかされる……」(スターツ出版・松島滋氏)。そこで、以降は両方のサイトに掲載することにし、出版プロモーションを展開。結果、どちらのユーザーにも支持されるようになった。
 
 「ただE★エブリスタは、作品が『連載中』でなければ読まれない。なので、読者が離れないように書きつづけていくと必然的にページ数が多くなる。でも、野いちごは『完結』しなければほとんど読まれない。完結後に閲覧数が爆発的に伸びるので、長く書くよりも、本1冊分の分量で完結させた方が良い。真逆なんです」(ウェルザード氏)
 
 著者はそれまで小説をほとんど読んでこなかったというが、若い読者を意識して平易な表現を心がけ、改行を駆使してスクロールの長さで緊張感を煽るなど、視覚に訴える(ディスプレイ上の表示を意識した)演出をし、怖いだけでなく恋愛展開や裏切り、友情、切なさを描く人間ドラマを盛り込んでいた。
ウェルザード氏
 
 「読者からのコメントで今後の流れを先読みしたようなことを書かれたりすると『絶対にそうはしない!』と思って展開を変えたりもします」(同)
 
 同作は集英社が運営するアプリ「ジャンプ+」上でマンガ化され紙の単行本も発売されるなど、メディア展開も好調である。
 
 E★エブリスタ、野いちご、書籍、ウェブコミック、マンガ単行本それぞれで、読者層は少しずつ違うという。逆にいえば、普段はそれぞれのフィールドで作品流通が(そして顧客が)分断されている状態だったのだ。『カラダ探し』のように、今後は異なるプラットフォーム、異なるメディアが横断的に協業することで多様なユーザーに作品を届け、ヒットの息を長くする方策が編み出されていくのかもしれない。
 
(飯田一史・ライター)
(2015年7月3日更新/ 本紙「新文化」2015年7月1日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。ライター、編集者。コンテンツビジネスに関するジャーナリスティックな活動から創作理論の講義まで、文芸とサブカルチャーを中心に活動を展開している。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に『21世紀探偵小説』(南雲堂)などがある。
               
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