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第28回 韓国出版社イメージフレーム(上)
日本は「一作家一宇宙」
 「小説家になろう」連載の小説が書籍化されることはもはや珍しくない。しかし、日本人が日本語で書いた作品が、日本語版書籍が出る前に韓国語版で出た例は、じぇにゅいん作『俺、りん』が初めてだろう。刊行を手がけた(株)イメージフレームの朴寛炯(パク・グァンヒョン)編集長に出版の背景と、日本ではあまり紹介されることがない韓国のラノベやネット小説事情について訊いた。
 
 日本のネット小説は元々チェックしていた?
 
 「はい。日本の個人ウェブサイト、ブログ、2ch連載小説などは2000年頃から読んでいます。『小説家になろう』やpixivができてからは新作チェックが便利になった反面、個人ウェブサイトやブログなどが寂しくなりました。
 韓国で日本のネット小説を読む読者は少数ながらも、そこそこいます。個人的には、同じネット小説分野では、日本の作品の方が韓国のものより面白いと感じています」
 
 韓国にはない、日本のコンテンツの魅力は?
 
 「〈一作家=一宇宙〉とでも言うべき、趣向の多様性です。ただ、作品が持つ社会的文脈には書き手があまり関心を持たない、という側面もある気がしています。韓国産作品の特徴は逆で、社会的な声や文脈を作品に反映した作品が多いところだと思います。ただメッセージ性を重視するため、作品が鑑賞者に提供しうる『快楽要素』に日本人の作品ほど集中できない傾向があります」
 
 『俺、りん』のどこに惹かれたのでしょうか。日本でランキング上位になっている異世界転生ものとは毛色が違うスポーツもの(青春野球小説)ですが。
 
 「その『ランキング上位の異世界転生もの』は日本の出版社が先に『出版しないか』と作家にオファーしますから、日本の出版社が検討しない、興味を持たない非メジャーのジャンルから選ぶことになるわけです。『小説家になろう』のランキングやポイントなどは現在の流行を知るにはいいですが、作品の面白さや完成度とは必ずしも一致しないと思います。日本の出版社がランキング上位作品ばかりを選ぶのは残念です。
 『小説家になろう』発の異世界ものやゲームを背景にした作品が日本では人気ですが、韓国にも小説投稿サイトは存在しており(代表的な2つのサイトは「小説家になろう」より長い歴史を持っています)、似たような流行が00年代初期にすでにありました。そのため、韓国では『今の流行りじゃない』と思われる傾向があります」
 
 日本人作家の作品で「日本語版が出ていないのに韓国語版が出た」という前例は?
 
 「ライトノベルでは初です。漫画分野では00年代初頭に1、2回ありました。韓国の漫画雑誌が日本の作家に新作を連載してもらい、単行本が出版された事例があります。出版にまでは至りませんでしたが、かの『ソードアート・オンライン』が日本で出版される前、ウェブ小説の段階で韓国の出版社が川原礫さんに韓国での出版を提案したこともあると聞きました」
 
 〈後編につづく〉
 
(飯田一史・ライター)
(2015年8月4日更新/ 本紙「新文化」2015年7月30日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。ライター、編集者。コンテンツビジネスに関するジャーナリスティックな活動から創作理論の講義まで、文芸とサブカルチャーを中心に活動を展開している。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に『21世紀探偵小説』(南雲堂)などがある。
               
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