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第29回 韓国出版社イメージフレーム(下)
大きい有料電子版市場
 日本人が日本語で書いた「小説家になろう」連載の小説、じぇにゅいん作『俺、りん』は、日本語版書籍が出る前に韓国語版が刊行された。版元である(株)イメージフレームの朴寛炯(パク・グァンヒョン)編集長に出版の背景と韓国のラノベ出版状況を訊いた。
 
−−韓国の文芸市場の状況は?日本では純文学は衰退し、ラノベやネット小説の存在感が増しています。
 
 「一般の文学出版の部数が減っているのは韓国も同じです。ライトノベル市場はここ10年間で増加し、ここ2〜3年間は小説分野のベストセラーの20〜30%ほどを占めています。それでも新聞・放送などに携わる記者や評論家はいまだジャンルの存在そのものを知らない(無視するとかではなく認識の外にある)ことが多く、また、サブカルチャー分野の小説(いわゆる『ジャンル小説』)市場におけるシェアを見ても、女性向けのロマンス小説よりは小さいです。
 
 ネット小説に関して言えば、日本では電子書籍の市場は『紙で発行された本の電子書籍版』を中心にして形成されていますが、韓国ではネット上の小説をそのまま有料化したり、最初から電子書籍として出版されたものの市場規模がはるかに大きい。韓国ではネット小説が後に紙の本で出版されてヒットした事例はほぼありませんが、それはネット上での有料連載などで十分成功しているからでしょう。なお、韓国のネット小説での人気ジャンルは、男性向けではファンタジー、女性向けではロマンスとBLです」
 
−−日本のラノベを翻訳出版する会社は、韓国ではどれくらいありますか?
 
 「ミステリーなど一般小説の翻訳出版をする会社は多々ありますが、ラノベは現在7社です。ちなみにヒットするタイトルは、韓国でも日本とほぼ変わりません。一番売れたのは『ソードアート・オンライン』で、おそらく100万部くらいはいっているでしょう。ただし翻訳ラノベの平均的な初版部数は2000〜3000部程度。ヒット作になると発売1カ月間で2万部程度の売上げになることも多いです」
 
−−『俺、りん』の反響は?
 
 「売上げは爆発的な数字ではありませんが、個人的には満足しています。複数の書店チェーンのランキング上位にも入りました。読者の評価は上々です。ライトノベルの中で『スポーツ』は珍しいジャンルなので、注目されています」
著者用に特別製作した日本語版の表紙
 
−−ラノベ翻訳出版に関しての御社の展望は。
 
 「日本のライトノベルのヒット作はすでに韓国の他の出版社が契約しているケースが多く、難しい状況です。ですから日本の出版市場では注目されなかったネット小説でも、韓国市場に合いそうな良い作品があれば、今後も紹介していきたいですね」
 
 〈本インタビューの仲介、翻訳は出版エージェントや翻訳、ライター業を手がけるコミックポップ・エンターテインメント代表の宣政佑(ソン・ジョンウ)氏にご協力頂いた。記して感謝したい〉
 
(飯田一史・ライター)
(2015年8月28日更新/ 本紙「新文化」2015年8月27日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。ライター、編集者。コンテンツビジネスに関するジャーナリスティックな活動から創作理論の講義まで、文芸とサブカルチャーを中心に活動を展開している。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に『21世紀探偵小説』(南雲堂)などがある。
               
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