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第32回 クリスタ出版
地方発、未経験から参入
 出版事業を始めて約2年、母体となる会社を含めても創業5年程度の新興・クリスタ出版は、星月子猫『最強人種』を皮切りに、ウェブ小説の書籍化に参入した。
 
 大阪に居を構える同社の前オーナーは、自身もE★エブリスタで小説を執筆するクリエイターだった。作家と交流を持つうち、分量が長すぎたり、題材が商業向きではないという理由で「いいものを書いても必ずしも本になるわけではない」という状況であることを知り、それを打開するために出版事業に参入。編集の経験者は1人もいなかったが、そのとき手を挙げたのが、当時事務職に携わっていた伊藤優氏である。今では編集から取次会社との交渉(流通は星雲社)、書店営業までを手がけている。
 
 現在、編集者は3人。専属の営業はまだいないが、本を刊行すると関西圏を中心に書店の店舗や本部に皆で出向く。
 
 
 「出版業界は東京中心ですが、うちは本社が大阪にあるので不便なことも多い。ただ、売り出したい本があっても出版社の方が西の方まで直接足を運ぶ機会は少ないようで、私たちが関西圏で書店まわりをしていると、すごく応援してもらえている実感があります」
 
 作品選びについては、編集者が実際に読み込むのはもちろん、クリエイターや小説投稿サイトのユーザーとの交流から得た情報も大きく、現状、他社とオファーが競合したことはないという。
 
 「今のエブリスタは最初から書籍化をめざしているセミプロの方が多いと思います。でもうちがお声がけしているのは前身のモバゲー小説時代から活動されていた方とか、小説を書いているうちにファンがついていた、本になるとは思っていなかったというタイプの方が多いんです」
 
 すでに多数の版元が参入しているウェブ小説書籍化だが、日の目を見ていない有力コンテンツはまだあるという考えだ。
 
 『最強人種』は四六判ソフトカバーで刊行して現在1万部(初版4000部)、続刊も予定されている。新興版元によるほとんど初の書籍であること、昨今の小説市場の厳しさを考えれば、上々の滑り出しだろう。読者は10代後半から20代前半までが多いという。
 
 「ウェブ小説のファンが『こういう本が欲しかった』と言ってくれる出版社でありたいなと。会社の規模が小さいぶん、1作品に時間をかけてやっています。目標は、やはり編集者ひとりから始めて大きくなられたアルファポリスさん」
 
 現状はおおよそ月1冊の刊行ペースだが、体制を整えて点数も徐々に増やしていきたいと伊藤氏は語る。クリスタ出版は、未経験、少人数、地方発といったことを負の材料とせず、むしろそれを活かしながら事業を展開している。たったひとりであっても、どんなにリソースが少なくとも、本気で動く人間さえいればレーベルは立ち上がるのだということを、教えてくれる。
 
(飯田一史・ライター)
(2016年2月5日更新/ 本紙「新文化」2016年2月4日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。ライター、編集者。コンテンツビジネスに関するジャーナリスティックな活動から創作理論の講義まで、文芸とサブカルチャーを中心に活動を展開している。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に『21世紀探偵小説』(南雲堂)などがある。
               
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