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第34回 ブックウォーカー
2次創作の可能性追求
 ウェブ小説は紙で書籍化され、同時に電子書籍版が刊行されることも多い。ネットで無料で読めたものが、改稿版とはいえ有料で販売されるとは奇妙な事態だが、売行きはどれほどか。ラノベ系に強い電子書店を展開し、紙の本の読書に近いインターフェースにこだわりのあるKADOKAWAグループのブックウォーカー(BW)に訊いた。
 
 「うちのユーザーは30代前半の男性が多いが、その層を中心に非常に売れている。たとえばMFブックスの主要タイトル『無職転生』などは紙の2割くらい。あるいはウェブで既読だがオフラインでも読みたい人、著者を応援するためにお金を払いたい人、ウェブの横書きではなく縦書きの本として読みたい人などがいる。著者の意向などで電子書籍化の許諾が取れないケースも稀にあるが、電子化リクエストは多く、ニーズは高い」(常務取締役CTO・橋場一郎氏)
 
 もともと本を大量に買うからこそ「紙の本は場所を取るため、(ほとんど)電子書籍しか読まない」とシフトした人たちがすでに一定数いるという。だが人によってどんな形態で読みたいか、モノとしての魅力にこだわるかは多様であり、版元はそれに合わせて単行本、文庫、電子書籍、カバーやイラストの有無など様々なパッケージを用意すればいい、との考えだ。
 
 BWは購買特典で電子版独自の書き下ろし小説や描き下ろしイラストを付けるにとどまらず、ドラマCD付きなどを用意して好評を得た作品もある。
 
 また、BWはKDP(Kindle Direct Publishing)のように簡単に電子書籍を個人出版できるサービス「BWインディーズ」も2015年9月からスタートさせている。作品数は現状1000点ほどで9割が小説、それもラノベ系が多い。
 
 「電子出版の敷居を低くしたい。ワードや一太郎で書いているファイル、KADOKAWAが始めた小説投稿サイト・カクヨムで書いている作品を負担なくEPUBに変換して販売できるようにしていきたい。UGC(ユーザー作成コンテンツ)サイトとのコンテストや専門学校バンタンとの提携、ニコニコ超会議での電子書籍即売会なども考えている。インディーズ作品で人気が出たものはKADOKAWAの編集者が紙の書籍にすることもあると思う」
 
 中長期的には、カクヨムがそうしているように一部作品の2次創作をライツ・クリアランスし、有料販売も可能にして原著者にも金銭が還元されるしくみを作りたいという。
 
 「それができるのはKADOKAWAグループしかないと思う。BWは世界展開しているから、2次創作可にすることで現地ユーザーによって日本の小説が自由に翻訳されるようになれば、世界中にファンが広まる作品も出てくるのではないか。小規模に実験しやすいネットの特性を活かしてルールづくり、文化づくりを試行錯誤していきたい」
 
(飯田一史・ライター)
(2016年5月30日更新/ 本紙「新文化」2016年4月7日号掲載)
飯田一史プロフィール
1982年生まれ。ライター、編集者。コンテンツビジネスに関するジャーナリスティックな活動から創作理論の講義まで、文芸とサブカルチャーを中心に活動を展開している。著書に『ベストセラー・ライトノベルのしくみ』(青土社)、共著に『21世紀探偵小説』(南雲堂)などがある。
               
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