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第3回 「ムダひとつとっても。」

 明けましておめでとうございます。
 本年も一層のお引き立てのほど、よろしくお願いいたします。

 さて。
 私自身は例年、初詣以外に出かけることもなくまったりとしたお正月休みを堪能しているのですが、テレビで見る初売りの光景で目が行くのは福袋情報。


 よもやブームもここまできたかと思わず笑ってしまった『血液型別福袋』や、エコバッグに品物を詰めた『エコ福袋』、婚活中の女性を応援する『婚活福袋』など、変り種の福袋が並んだのは、2008年の名残でしょうか。(2008年の漢字は【変】でした)
 続く不況のあおりを受けて客単価は減少傾向にあるものの、『野菜詰め放題』や『靴下福袋』など、実用志向の福袋は好調だったようですね。


 節約・省エネ・エコ・ダイエット…
 ムダだと思われるものはどんどん排除されていくのが世相とはいえ、ムダがなさすぎるのも味気ないよなぁと思ったりもする、今日この頃。
 (あ、個人的なムダ=脂肪はなんとか排除したいものですが。笑)


 そのムダは、本当にムダですか?


 「広辞苑 第6版」(岩波書店)によると、『ゆとり』とは「余裕のあること。窮屈でないこと」。
 心に豊かなゆとりを生み出すムダもあるということも、忘れてはなりません。
 周りを見渡せば、ムダという名のゆとりが生み出す“美”がたくさんありませんか?


 例えば、『間』。
 あまり目にしなくなった、床の間や縁側。これらの間=空間は、部屋でも廊下でもない一見ムダなスペースに見えます。
 しかし、床の間に活けられた四季折々の花を愛でながら茶の湯を楽しんだり、縁側で庭のススキと月の風情を感じたりするこの『間』には、春夏秋冬のある日本ならではの心のゆとりがあります。


 もっと身近なところでいえば、文章の『行間』。
 当たり前ですが、ぎゅうぎゅうに詰め込まれた文章は読みにくいですよね。
 見た目ももちろんのこと、「阿吽」や「ツーカー」、「目は口ほどに物を言う」という日本文化ならではの『行間』には、言葉では伝えきれない心の機微が「…」という余白で書き表されていたりもします。


 本で言うなら、『遊び紙』。
 これもまた、ゆとりあるムダのひとつです。
 皆様ご存知とは思いつつも説明させていただきますと、遊び紙とは、本を開いた時にある紙のこと。
 目次が印刷されているわけでも、本文が始まるわけでもないこのピラッとした紙は、やっぱり一見ムダな紙なのですが、そこからすでに作品が始まっているといっても過言ではありません。


 それは、着物でいうところの『かさね』。
 かさねとは、袖口や裾などにチラリと違う色がのぞくように着物を重ねたり、裏表で色を違えて下の衣の色を透かしたりすることで、日本の四季を表すものです。
 有名なところで『十二単(じゅうにひとえ)』がありますが、かさねにこだわりすぎたあまり、衣の重さで歩けなかった…なんて記述もあるほど。
 このムダが生み出す妙こそ、やはり日本文化ならではの“美”と呼ぶべきでしょう。


 とはいえ、実用性を重視して効率的に物事を進めてこそ、効果的に使えるムダが生まれるというもの。
 本当にムダなものをちゃんとなくして、余裕を作らないといけませんね。
 それから、今年も遊び心たっぷりに新しいモノを作り上げていきたいと思います!

(井出涼子)

(2009/1/8)

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