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第6回
「5分後に意外な結末」の面白さ、学研プラス・目黒哲也氏に聞く・上
 2013年に刊行を開始した学研プラスのショートショート・シリーズ「5分後に意外な結末」は、シリーズ累計が350万部超。学校読書調査や朝の読書で読まれた本などの小中高生向けランキングで、上位に入る常連であり、「○分で××」というタイトルのフォロワーを無数に生んだ。
 
 シリーズの生みの親で担当者でもある学研プラスコンテンツ戦略室の目黒哲也氏は「ショートショート自体は昔からありましたが、もしかすると、今の子たちはその言葉になじみがないかもしれない。そう考えて『5分後に意外な結末』という表現のタイトルにしたんです」と話す。
 
 類書との大きな違いは、収録作品の文章へのこだわりにある。本が苦手な人も含めてなるべく多くの読者に楽しんでもらえるよう、語順や接続詞の使い方、句読点の置き方に至るまで、徹底して注意を払う。また、多様な作品を収録したアンソロジーでありながらも、1冊を通して文章のリズムを整え、読後感に落差≠ェないよう気を配る。こうした工夫が、「読みやすい」「ハズレがない」という読者の信頼につながっている。
 
 一方で、装丁や物語の内容に関しては「成長した読者に『子どもっぽいから、もう読まない』と卒業されてしまったり、『どうせマジメな優等生向けでしょ』などと思われたりしないよう、児童書であっても子どもっぽさを裏切るものも入れるようにしています」(目黒氏)。
 
 「5分後〜」は、ジャンルや1編の長さ、キャラクターなどを変えて読者を飽きさせない工夫をしながら、現在までに28点を刊行。さらに19年からは「公式ライバル」と銘打った「5分後の隣の〜」シリーズも展開している。
 
 新シリーズの意図について目黒氏は「読者に『似たようなものばかり』と感じさせないよう、『5分後〜』ではできないことにチャレンジすべく立ち上げました」。
 
 例えば最新刊の『夢三十夜』(「坊っちゃん文学賞」書籍編集委員会編)は、母子家庭+「箱」の中に常備された妹と父親が、運動会に参加する様子を描くという不思議な短篇「ファミリーボックス」から始まる。これも売行き好調だという。
 
 「僕はかつて早川書房から刊行されていた『異色作家短篇集』や『ブラック・ユーモア選集』が好きでした。たとえば『ユーモアスケッチ傑作展』には、バッハの一族の名前をただただ羅列する作品なんかも収録されていたんですね。そういうものは、ある程度読書慣れした人でないと、そのままでは受け入れられないかもしれない。でも見せ方次第で読んでもらえるようなものに仕立てさえすれば、きっと好きになってくれるはずだ、と。そうやって自分がおもしろいと思ったものを、かたちを変えて読者に届けていきたいんです」。ショートショートの魅力と面白さについて、目黒氏は熱く語る。
 
 1編が短く文章が読みやすい。「意外」「涙」「恋」など読後感が明確−−これらの要素に加え、1冊ごとに今の十代にとって新鮮に感じられる趣向が用意されていること。それが目黒氏の手がける本が、特別に支持され続ける理由だろう。
 
(2021年7月15日更新  / 本紙「新文化」2021年7月1日号掲載)
飯田一史プロフィール
ライター。 文芸とサブカルチャーを中心に取材・執筆を手がける。著書に『いま、子どもの本が売れる理由』(筑摩書房)、『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(星海社新書)、『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)などがある。
               
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