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第10回
「TikTok効果」の限界と課題、クセの強さ補う工夫が必要
 これまで2回にわたり、TikTokで「バズる」本の特徴・動向を検証してきた。今回は、全国展開の書店チェーンの本部に勤務する傍ら、TikTok上でマンガを紹介している人への取材内容を参考に、そこから見えた「TikTok売れ」の特徴、限界、課題などについて書いてみたい。
 
 その人は「自身の投稿動画の再生回数、取り上げた作品の動画投稿日以降の書店チェーン内の売行き、そしてその書店グループが出版市場に占めるシェア」から類推し、「ある作品の紹介動画が20〜30万回再生いけば、全国で1000部程度売れている可能性がある」という。
 
 日本のTikTokの月間アクティブユーザー数は、950万(2019年発表)。全ユーザーが同じ動画を観たとして、同じ割合で売れるとするなら3〜5万部。計算上は、これがTikTok単独の作用で作れるヒットの上限になる。
 
 紹介者やジャンルによって購買比率が変わるとしても、上ブレは2〜3倍がせいぜいだろう。もっとも、ひとりの人間がひとつの作品に関する動画を何度も観ることで購入に至ることもあろうが、仮に2000万回再生でも7〜10万部。そして単発で2000万も観られる紹介動画は、きわめてまれだ。
 
 ひとつの動画の効果は、短期間に留まる。売行きに影響するのは、投稿の翌日が最大で、次の週末を過ぎると急速にしぼむ。そのため、出版社が慌てて重版しても、間に合わないこともある。
 
 これが楽曲のプロモーションなら、同じハッシュタグを使ったダンスチャレンジなどに無数の投稿者が参加して、2〜3週間盛り上がることも珍しくない。
 
 出版物でも、映像化作品などの著名タイトルに関して、特徴的なセリフや動作を撮って気軽に投稿できるキャンペーンなら、同様の現象は起こせるかもしれない。だが、特定の新刊の紹介動画を、自然発生的に何十人もが手がけることは、現実として考えにくい。
 
 では出版社がPR案件として、複数のインフルエンサーにギャラを払い、動画制作を依頼するのはどうか。近年、フォロワー数の多い「TikToker」に対する発注金額は高騰している。先述した実績のアベレージを考え合せると、ワリに合わないケースも少なくないと思われる。
 
 小説の場合は、書店店頭に「TikTokで話題」棚を作ることで、少し前にバズったタイトルも再アピールできるかもしれない。しかし、1作品ごとに巻数が多いマンガでは、複数のタイトルを並べて棚を作るのはスペース的にも難しそうだ。
 
 また、小説なら1000部単位で動けば、売上ランキングが大変動し、ランキング入りが人目に触れて、売行きがさらに伸びる。一方、もともと発行部数の多いマンガでは、たとえシリーズ累計で1000部プラスして売れてもランキング入りは難しく、同様の効果は得にくいだろう。
 
 こうして見てくると、TikTokの紹介動画は、若年層に一定の効果があるのは確かである。ただ出版社や書店は、他の施策と連動するなどの工夫によって、TikTokのクセの強さを補う付き合い方が必要だといえる。
 
(2021年11月11日更新  / 本紙「新文化」2021年10月28日号掲載)
飯田一史プロフィール
ライター。 文芸とサブカルチャーを中心に取材・執筆を手がける。著書に『いま、子どもの本が売れる理由』(筑摩書房)、『マンガ雑誌は死んだ。で、どうなるの?』(星海社新書)、『ウェブ小説の衝撃』(筑摩書房)などがある。
               
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