第21回 大手PFの支配と「独立漫画」の挑戦

NAVER Webtoonで個人作家が連載権を獲得するには、自由投稿の「挑戦漫画」で人気を博したあと、「ベスト挑戦」「公式連載」と勝ち上がっていくのが一般的だ。最初の「挑戦漫画」には分量や更新頻度の制約がないが、公式作家になるには、毎話50コマ以上での週刊連載が実質的に求められる。

最初期のウェブトゥーンは、商業的・紙面的な制約がある雑誌漫画、貸与店向け漫画のカウンターとして、作家が自由に長さや演出、作品内容を決められる点が魅力のひとつだった。しかしそんな時代はとうの昔に終わり、現在のウェブトゥーンでは、大手プラットフォーム(PF)が「適切」な分量や表現を決める「権力」を持つようになった。

「絵がヘロヘロな作家がセンスやストーリーテリングの才でヒットを掴みとる」といった、2000年代までよく見られたサクセスストーリーは今、大手PF発では顕著に減っている。また、スタジオ(CP)制作ウェブトゥーンの台頭以降、集団制作によるハイクオリティの作画が行われるようになり、個人作家への注目が相対的に減少した。

さらに多くのCPは高騰した制作費を回収するため、人気ジャンルを狙って作品づくりを行う。結果、PF上では恋愛やロマンスファンタジーなどが主流となり、ジャンルの偏りが生じている。

2010年代後半からは、こうした動きへの反発も起こった。たとえばス・シンジがFacebookとInstagramに、2017年~18年に連載した『ミョヌラギ(嫁の時代)』は、韓国社会で「嫁」が経験する過酷な問題を扱い家父長制への批判を描いた。この作品は爆発的な人気を博し、ドラマ化された。

NAVER Webtoonなどとは異なり、作家が自分のペースで描きたい内容を自由に投稿し、収益化をはかる「独立漫画」系のオープンPFとして、Dillyhub、Postypeなどが台頭した。Dillyhub発では、仏教と女性の人生を題材にしたゴサリ博士『極楽往生』が年間売上3億ウォンを達成、19年の大韓民国コンテンツ大賞で文化体育観光部長官賞を受賞した。

ス・シンジや『極楽往生』のフェミニズム的なメッセージ性、商業主義への抵抗は、貸本漫画界での横暴へ抵抗した、1980年代の純情漫画第二世代作家たちの動きを思わせるものがある。

2020、21年には『ミョヌラギ』『極楽往生』などがカカオウェブトゥーンにも転載され、独立漫画でも人気が出れば、大手PF上でさらに注目される機会を得られることが示された。

加えてTumblbugなどのクラウドファンディング・プラットフォームが、独立系漫画の重要な資金調達・流通手段となった。ZINEや単行本の制作費を募るプロジェクトも多く見られ、毎年総額数億ウォンが集まる。刊行されたインディーズ作品は、即売会や書店で販売される。

中小規模ながら、独立漫画専門店(漫画を専門に扱う独立系書店)では企画展や交流イベントも行われ、さらに学生街にあるこぎれいなコミックカフェでは、ウェブトゥーンや日本マンガの単行本と並んで、こうしたインディーズ漫画も一角を占めている。

今のところこれらの動きは、「20世紀の紙漫画から21世紀のウェブトゥーンへ」といった劇的な〝主役交代〟ではなく、現行システムを補完する程度のものである。翻訳もなかなかされず、韓国外では可視化されづらいのだが、実はこうした作品群が、韓国漫画・ウェブトゥーンの多様性と次代への可能性を育んでいるのだ。

(本紙「新文化」2025年6月5日号掲載)

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