第17回 存在感増す児童文庫作品、中学生のラノベ離れと対照的に

 学校読書調査で明らかになった中高生の〝ラノベ離れ〟に関しては、本欄でも何度か触れてきた。それと対照的に、中学生において存在感を増したのが、児童文庫作品だ。
 2021年の同調査では、「今の学年になってから読んだ本」の上位に、「名探偵コナン」「鬼滅の刃」「呪術廻戦」「ハイキュー!!」「青鬼」「ジョジョの奇妙な冒険」「弱虫ペダル」「君の名は。」「僕のヒーローアカデミア」「orange」「絶叫学級」といったマンガやアニメのノベライズがランクインした。
 児童文庫オリジナル作品では、中1男子で角川つばさ文庫の「恐怖コレクター」、中1、中2男子で「絶体絶命ゲーム」。中1女子で講談社青い鳥文庫の「探偵チームKZ事件ノート」が上がった。
 親本はあるにしろ、新規書き下ろし部分が大きいタイトルとしては、中1と高1男子(!)に、つばさ文庫の「空想科学読本」、中1男女、中2・中3男子に、宗田理の「ぼくら」シリーズが入っている。
 筆者は先日、ある児童文庫の編集部に取材した際、読者層を聞いてみたが、やはり「中心は小4~中1、中2」ということだった。
 「児童」とはいうまでもなく「小学生」を指すが、「児童文庫」は、中学校の「生徒」にまで読者年齢が伸びてきている。なぜだろうか。
 マンガやアニメは、「中学生になれば卒業する」というものではない。だからその小説版を中学生が読んでも、バカにされるようなことにはならない。それらのノベライズが日常的に親しまれているからこそ、その刊行レーベルや児童文庫に対し、「子どもっぽい」「幼い」などといったイメージを抱かなくなってきているのだろう。
 またオリジナル作品も、小学生の頃から読んでいたシリーズが完結するまでは、中1、中2になっても追いかけ続けるのが自然な流れなのだ。
 もし他に、彼・彼女らが「これは自分たちのための本だ」と思えるものがあれば、そちらを選ぶのだろうが、いわゆるYAレーベルから出ている作品は、どこか説教くさくてお行儀がよすぎる。かといって、読者の中心を大人にシフトしたラノベはというと、主人公の設定に共感・感情移入がしづらく、性的な要素が多すぎるようだ。
 実は日本性教育協会「青少年の性行動全国調査」などを見ると、2010年代以降、小中高生の性行動や、性に対する関心はおしなべて消極化し、性に対するイメージは悪化している。現在の中学生にとって、ラノベや大人向けの小説に出てくる性的な要素は、嬉しいどころか「気持ち悪い」と思われている可能性すらある。
 児童文庫のイラストは、中学生が見ても、子どもっぽいと感じないような〝頭身〟の高さやデザイン性の高さが目立つようになった。一方でストーリー展開においては、今であっても性愛描写は最大限でキス、それもよほどのことがなければしない。こうした案配が、今の中学生にとってはちょうどいいものになっていると思われる。
 児童文庫を、今以上に「中学生も当然読んでいいもの」と認知を変え、さらに売り伸ばしていくためには、もはや「児童文庫」という呼び方そのものを変えるべきかもしれない。
(2022年6月23日更新  / 本紙「新文化」2022年6月2日号掲載)