第20回 大学生の不読率上昇原因は? 「学生生活実態調査」もとに検証

 2021年10月~11月に実施され、22年3月に発表された、全国大学生協連による「第57回学生生活実態調査」。この調査によると、1日の読書時間を0分と回答した学生の割合は、2012年には34.5%だったが、21年には50.5%と、上昇傾向にある(不読率のピークは17年の53.1%)。
 1973(昭和48)年、首都圏の5大学と1短期大学の文系学生を対象に、平賀増美氏が行った調査では、不読率は6.2%だったというから、大幅に上昇しているといえる……のだが、「大学生が本を読まなくなっている」のか、「本を読まない層が大学生になっている」のか、どちらの比重が大きいのかが、実は定かではない。
 大学進学率は、70年代には20~30%台だったが、現在は60%弱。少子化にもかかわらず、大学入学者数は伸び続けて約63万人。国立大学の学生数はほぼ横ばい、公立大学は微増、大幅に増えたのは私立大学生、それもスポーツ推薦やAO入試(総合型選抜)で入学する層である。皆が皆でなくても、そこに低学力層がかなりの数含まれていることは、想像に難くない。
 もっとも、学生生活実態調査は経年での変化を正確に見るため、指定した30大学(国立19、公立3、私立8)の数字を毎年追っている。だから進学率の変化や低学力層の増加などは関係ないのでは、と思うかもしれない。
 しかし文科省の調査では、推薦.AO入試での入学者の割合を、2000(平成12)年と2019(平成31)年で比較すると、次のようになる。
 国立=10.5%(推薦10.2%、AO0.3%)→16.3%(推薦12.2%、AO4.1%)、公立=16.0%(推薦15.9%、AO0.1%)→27.9%(推薦25.1%、AO2.8%)、私立=38.9%(推薦27.2%、AO1.7%)→54.2%(推薦42.6%、AO11.6%)
 推薦・AO入試の割合は、この20年で大幅に増えており、今や国公立大やトップ私大も、多様な学生を集めていることがわかる。つまり「本を読まない層が学生になる」確率、割合は、確実に増えているはずだ。
 だが不読者が増えたにもかかわらず、この20年間、大学生の平均読書時間は、30分プラスマイナス数分で推移している。2000年と比べると、学生数は約2000万人から約2500万人に増加しているから、平均読書時間がさほど変わらないなら、学生数×読書時間で算出する「大学生全体の読書時間」は増えている可能性さえある。
 書籍購入費にしても、平均で見れば減少傾向にはあるものの、学生数の増加を考えれば、総額では相殺されているともいえる。
 「だから、何も憂える必要はない」と言いたいわけではない。筆者がここで言いたいのは、読書推進活動をするにせよ、学生向けに本を売る施策を考えるにせよ、また「学生の読書」の傾向を把握するにせよ、大学生という存在自体の質的・量的な変化を、ファクトベースで把握する必要がある、ということである。
 「大学生が本を読まなくなっている」のと、「本を読まない層が学生になっている」のとでは、問題の捉え方が変わってくる。それによって、手の打ち方も変わるはずなのだから。
(2022年9月22日更新  / 本紙「新文化」2022年9月1日号掲載)