はるちゃんが久しぶりに店に来た。私の一番若い友だち。友人の娘さんなのだけれど、子どもが苦手な私が唯一仲良くさせてもらっている女の子。出会った頃は4歳だったはるちゃんも、なんとこの春から高校生。お店には大学生になったお兄ちゃんとお母さんと一緒に来たのだけれど、兄妹の成長ぶりに目を瞠る。ちょっと見ない間にずんずん、大きくなってしまう。お兄ちゃんは20歳になって、なんだかスッキリした顔をしている。ああ、これが思春期をくぐり抜けた顔なんだな、と感慨深くなる。
はるちゃんはキラキラのど真ん中。眩しいくらいきれいだ。実は彼女、丸の内本店の最年少フェア企画者でもある。はるちゃんのお兄ちゃんとお姉ちゃんにあるフェアの選書をお願いしたところ、楽しそうに選ぶ2人を見てはるちゃんの絵本魂に火がつき、気づけばお家の廊下に並べてあったという絵本の写真がお母さんから送られてきた。その選書が、日本、海外、ロングセラー、新刊と最高にバランスが良く、おまけに判型が違う絵本が見事に正方形に並べられていて、そのまま「はるちゃん4歳、ひらめきの7冊」として、フェアをすることとなった。そのうちの1冊が自分に似てると選んでくれた『くろいながい』(あかね書房、おくはらゆめ作)。黒い長い髪の毛を「きったときないの」とかわいい言い回しでいう女の子と尻尾の長い黒猫の判型も内容も最高にヘンテコな絵本。
小さい頃は絵本を読み聞かせしたりおしゃべりをしてくれたけど、中学に入ったあたりから照れくさいのか、顔を合わせているときはあまり話をしてくれなくなった。あとから「はるがこんなこと言ってた」とお母さんからLINEが来る。今回も、こんなメッセージが。
「はるが、りえちゃんは若く見えるよ! 何歳だろうって、つぶやいていたよ。いつもはるのつぶやきがおもしろい」
「48歳だよ! って言っといて」
「今、言ったら、三十何歳に見えるよって」
親でも先生でもない、彼女にとってカテゴリー分けしにくい大人である私は、年齢を当てはめづらいんだろう。ふふふ。でも、うれしいつぶやき。だけど、三十何歳って? 前半? 後半?図々しくも考えてしまう私……。
次の日、電車のなかに小学校の低学年くらいの男の子が3人並んで座っていた。真ん中の1人が同じ言葉を何度も何度も繰り返しつぶやいている。
「恐るべきうぬぼれ」
戒めかなと思い、そっとスマホにメモをした。
(本紙「新文化」2025年6月5日号掲載)