第49回 らいおんのはじまり

はじまりは、Hちゃんだった。2004年当時、アルバイトだった私は商談をする立場ではなく、架空社の営業として現れた彼女の注文書を預かるだけのはずだった。けれど、なぜか彼女に心を引かれ、思わず話を聞いてしまった。

差し出されたのは『だまちゃん』(竹内通雅/架空社)。猫みたいな姿のだまちゃんは、うさぎの耳やぶたの鼻などが欲しくて強引に交換していく。そのうちシカの角やらセイウチの牙やら押し付けられ、だまちゃんは奇妙な怪物みたいになってしまう、という衝撃的でぶっ飛んだ絵本だった。でもその力強さにクラクラして「すごい……」とつぶやくと、Hちゃんがうれしそうに「ほかにも!」と差し出した目録にはスズキコージさんの絵本がズラリ。お会いしたことはないけど好きなことを打ち明けると「じゃあ今度、会いに行こう!」と微笑んだ。

待ち合わせの今はなき吉祥寺のベッカーズの前でHちゃんを見つけた私はなんだかとってもうれしくなってしまい、そのまま腕を組んで、絵本専門店のトムズボックスに向かった。たしか竹内通雅さんの個展があるから、コージさんも含めていろいろな作家さんが来るよってことだったと思う。トムズボックスにはいっぱいステキな人たちがいて、もちろんコージさんもいて、みんなで踊って飲んで、最高の夜だった。ほぼ初対面なのにべったりの私たちを見て「親友ができていく過程を見てるみたい」とみんなが笑った。

この日を境に、いろいろな展覧会や絵本のイベントに参加するようになった。そして飯野和好さんのイベントでHちゃん、私、Iちゃん、Tちゃんが運命的な意気投合を果たす。お互いが大好きでたまらず、ほぼ毎日飲んでいた。Iちゃんが「この楽しい絵本談義の時間をフリーペーパーにしようよ」といいだした。ロゴマークはもちろんコージさん! こうしてチーム〝らいおん〟が生まれた。そしていつしか絵本を自分たちの手で作りたいとの思いが強くなり、2016年に「らいおんbooks」名義で児童書のレーベルを立ち上げた。

2025年は担当した『ひみつだけど、話します』(堀川理万子)の坪田譲治文学賞受賞、『ふみきりペンギン』(おくはらゆめ)の青少年読書感想文全国コンクール課題図書選定(ともにあかね書房刊)とうれしいこと続き。フリーペーパー制作からはじまったらいおんとしての活動も20年の節目を迎えた。先日久々に原画展を開き、来てくださった大好きな方々とたくさん乾杯をした。感謝に満ちた最高の一年になった。

(本紙「新文化」2026年1月15日号掲載)

著者プロフィールはこちら