2013年に登場したレジンコミックスは、ウェブトゥーンの連載における「話売り課金モデル」を初めて成功させた。レジンは、広告収入を中心としていた既成のポータルサイトでは参入が困難な〝成人向け〟の作品に力を入れ、急速に課金システムを根付かせていった。
レジン以降、ウェブトゥーン・プラットフォームは、部分的な課金を導入したビジネスモデル(以下BM)を次々に採り入れ、変化していく。
同じく13年にサービスを開始したカカオページは、翌年「待てば無料」方式を生み出した。
これはスマホ向けパズルゲームの、「1日に無料でプレイできる回数が決まっており、待てない場合は料金を払えば遊べる」というBMから着想を得たといわれる。
この方式では、ユーザーは各作品を24時間(のちに23時間)につき1話だけ無料で読める。しかし待ちきれずに続きを読みたければお金を払うしかない。
レジンが急成長した理由は、性的な内容を含むジャンルで課金を促進したことだった。しかしポルノには、「金を払った成人だけが読める」というゾーニングが必要だ。性描写を伴う内容を「誰もが(待てば)無料で読める」として設定してしまうのは、社会的にも法的にも許されることではない。
そのため、レジン型の課金モデルでは、「待てば無料」方式より必然的に、ユーザーの間口が狭くなるのは避けられなかった。
さらにレジンは、トラブルから作家離れが生じたことなども重なって次第に勢いを失い、2021年にKidari Sutudioに買収された。
一方で、「金を払ってでも読みたい」一般向けの作品をそろえたカカオページや、「基本無料で読めるが、連載の最新の数話のみ有料」という「先読み課金」モデルを導入したNAVER Webtoonが台頭していく。
これらは無料部分によって読者を集めると同時に、課金によって収益を上げることで、サービスを拡大させていった。
カカオページ台頭のきっかけとなったのが、「待てば無料」方式とともに『月光彫刻師』の成功だった。
この作品は貸与店向け小説として、2007年に刊行が始まった。のちに有力ウェブ小説サイト「ジョアラ」に連載を移したが、書籍版は85万部売れたといわれる超人気作である。
同作は、15年にウェブトゥーン化されてヒットしたことで、「人気ウェブ小説を原作とするウェブトゥーン」(ノベルコミックス)の実質的な嚆矢となった。
やがて「人気ウェブ小説を原作として、ハイクオリティな作画をスタジオ制作するウェブトゥーン」がビジネスとして成立することが実証され、制作スタジオ(コンテンツ・プロバイダ=CP)が乱立していく。
こうして、「待てば無料」方式と「スタジオ制作」がBMとして出揃うこととなった。日本では2010年代末から、スタジオ制作のウェブトゥーンが本格ヒットし始め、2016年、ピッコマによって「待てば無料」方式が持ち込まれた。
(本紙「新文化」2025年2月13日号掲載)