第24回 実は少数派?のラブコメ読者、「このラノ」ランキングなどで分析

 宝島社が毎年刊行している『 このライトノベルがすごい!』(以下『このラノ』)は、読者投票形式のランキングムックだ。同書への10代読者による投票で上位にくる作品と、「学校読書調査」で中高生が読んだ本の上位に挙げる作品とを見比べると、興味深いことがわかる。
 2022年度の学校読書調査と『このラノ』に、共通してランクインした人気作品には、「ようこそ実力主義の教室へ」「スパイ教室」「Re:ゼロから始める異世界生活」「86―エイティシックス―」「転生したらスライムだった件」がある。これらは10年代半ば以降に書籍化が始まった、ストーリー重視の作品といえる。
 一方、「学校読書調査」のみで見られるのは「キノの旅」「ソードアート・オンライン」、〈物語〉シリーズ、〈古典部〉シリーズといったロングセラーである。『このラノ』に投票するような積極的なラノベファンは、実際にはそれらを読んでいるのかもしれないが、わざわざこうしたタイトルには票を投じないようなのだ(ただし「ソードアート・オンライン」は、『 このライトノベルがすごい!2020』において「殿堂入り」認定されて以降、投票対象外になっている)。
 また、『このラノ』のみで見られる作品としては、「お隣の天使様にいつの間にか駄目人間にされていた件」「千歳くんはラムネ瓶のなか」「時々ボソッとロシア語でデレる隣のアーリャさん」「義妹生活」「継母の連れ子が元カノだった」などがある。いずれもラブコメで、これらがランキングのトップ10の半分を占めている。
 この2つの違いを比べてみた時、「中高生は学校読書調査のアンケートで、ラブコメ作品を挙げるのが恥ずかしいから書いていない」とは考えにくい。同調査は、個人の回答内容を同級生や教師に把握されるような設計にはなっていないからだ。
 ということは、非ラノベファンも含めた全体で見たときには、ラブコメ好きの数は、おそらくそれほど多くない。ラノベファンに加え、ファンとまではいかずとも「ライトノベルも読む」層も支持する作品だけが、「学校読書調査」のランキングで確認できる、と考えるのが妥当だろう。
 ちなみに『このラノ』の年代別ランキングを見ると、ラブコメ人気は10代と20代に集中しており、30代以上では上位に入る作品数が激減する。つまり、「10代(と20代)でラノベファンを自認するコアな読者層に、固有の需要があるジャンル」がラブコメ、ということになる。
 若い〝ラノベ読み〟のなかには当たり前にいる存在だが、本を読む人全体で見ると少数派--そんな微妙な立ち位置にいるのが、ラブコメラノベの読者なのである。
(2023年1月26日更新  / 本紙「新文化」2022年12月22日号掲載)