第116回 図書カード・券施策に注目

現在僕がもっとも注目し、調査しているのが、子どもたち(子どもに絞らない自治体もある)に対する読書支援策として、各地で実施されている図書カード配布やプレミアム付き図書券の販売支援などの行政の取組みについてである。

10月1日には、富山県書店商業組合が「プレミアム付図書券」の発売を開始した。期間限定で会員書店41店舗で購入・利用できる。富山県の生活支援・消費喚起プロジェクトの補助金を活用して実施されており、書店への誘客にもつながることから、積極的に各地で実施してほしいものである。

 なかでも、東京都多摩市が、市在住の小中学生らを対象に11月下旬に配布する、市内の書店4カ所で本の購入に使える5000円分の書店利用券の動向は気になっている。市内書店の購入に限定した利用券の配布は初めてで、物価高騰を受けた市民支援策の一環として、地域の書店への支援にもつなげる狙いとなっている。とくに食費・光熱水費などの高騰の影響が大きい、小中学生および来年度に小学校へ入学予定の児童を育てる世帯に対し、子どもたちの手元に届きやすい書店利用券は、効果が大きいのではないかと思っている。

 書店利用券は、図書カード手数料もなく、図書カードリーダーが無くても良いところがポイントだろう。現在は、使用する書店が限定されているが、図書カードリーダー未導入の小規模な書店にも門戸を広げ、書店業界全体で盛り上げる体制づくりが進むことを期待したい。

(本紙「新文化」2025年10月16日号掲載)

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