第25回 米澤穂信〈古典部〉シリーズ、男子高校生にも読まれる理由(上)

 米澤穂信による学園ミステリー〈古典部〉シリーズは、まず著者のサイト上に第1作『氷菓』の習作版の短篇小説が書かれた。次いで「楽園」というウェブ小説登録サイト上で好評を得たのち改稿・長編化し、角川学園小説大賞ヤングミステリー&ホラー部門に投稿。奨励賞を受賞した。 『氷菓』は2001年に、角川スニーカー文庫内に新設されたミステリーレーベル・スニーカー・ミステリ倶楽部から刊行された。
 そしてそれから10年あまり後の2012年、同シリーズが京都アニメーション制作でTVアニメ化され、大変な好評を博した。この年3番目に売れたライトノベルになったという。
 同作は、学校読書調査では2012年に初めて高校生男子の読んだ本の上位に入り、以降15年、18年(17年11月に実写映画が公開)、21年、22年に、やはり高2か高3の男子が読んだ本の上位に名を連ねている。
 映像化されるまで10年以上にわたり姿を見せなかったが、以降は定番化している」という珍しい作品なのである。また、ラノベではミステリーは売れないというのが定説になっているなかで、同作は数少ない成功例でもある。
 『氷菓』の元のレーベルであるスニーカー・ミステリ倶楽部は数年で撤退し、その後〈古典部〉シリーズは、角川文庫から刊行された。
 アニメ化当時にはキャラクターのイラストを描いたカバーが巻かれていたが、現在はイラストのないカバーに戻っている。そのため、今の高校生が本を見て、同作をラノベと思うか一般文芸と思うのかについては、判断が微妙なところだ。
 とはいえ、同作がラノベなのか一般文芸なのか、あるいはラノベでもミステリーは売れるのか売れないのか、といった議論はここでは不毛だろう。
 2017年の学校読書調査では「ラノベを読むかどうか」を小中高生に尋ねているが、高校生男子では「よく読む」が13・9%、「たまに読む」が17・6%で計31・5%。ちなみに高校生の不読率は50%前後だった。
 高校生で読書する層の6割がラノベを読むと見れば少なくはないが、実際にラノベを「よく読む」層は全体の2割もいない。男子の6、7人にひとりである(女子で「よく読む」は6・3%しかいない)。
 当連載の前回で、「10代のラノベ読みの中ではラブコメは人気ジャンルだが、学校読書調査ではほぼ入ってこない」と書いた。約14%の「よく読む」と答えた人たちが読むだけでは、高校生全体で見たときの人気作品にはなり得ないのである。
 ラノベを「よく読む」層に加えて、「たまに読む」「ほとんど読まない」層にも届くものになって初めて、高校生の「読んだ本」上位に入る作品になれる。そのためには、ラノベを「よく読む」層だけが支持する内容ではなく、高校生全体に支持されやすい特徴を持つ必要がある。
 では〈古典部〉シリーズはどんな作品で、他の人気作品と比べてどんな特徴をもつのだろうか。それについては次回に述べる。
(2023年2月24日更新  / 本紙「新文化」2023年2月2日号掲載)