第6回 エッセイはこちらです

 エッセイって何ですか?なんて書店員がいたら、マジかよー! と頭を抱えるが、私は今、エッセイの棚作りに頭を抱えている。マジで。
 今働いている書店には「のんびり読む本」という棚があり、比較的のんびりとしたエッセイはここへ収納される。しかし世の中には「ささっと速読したい」ビジネス寄りのエッセイや、「のんびりしている場合ではない」と諭す社会派エッセイもある。現状、のんびり以外のエッセイは、売場で迷子になりがちだ。胸を張って「エッセイはこちらです」とご案内できる棚も作りたい。
 しかし、いざ自分が「名エッセイ」と思うタイトルを発注すると、文庫が多いのである。文庫は文庫の棚にあったほうが見つけやすいだろう。小説家が気まぐれに書いたエッセイも、文庫になれば一緒に並ぶ。単行本でさえ、良かれと思って小説の棚に置く場合が多い。だが、小説の棚にあるから小説だと思って買ったのに、と怒られるかもしれない。正解がわからない。
 先日、買い忘れた白胡麻を求めて近所のミニスーパーへ行ったら、乾物の棚にも調味料の棚にも見当たらない。胡麻くらいあるだろうと店員に尋ねたら、ふりかけと一緒に並んでいた。怒る気になれなかった。

(新井見枝香/HMV&BOOKS HIBIYA COTTAGE)

(本紙「新文化」2019年7月25日号掲載)