第1回 本の未来に寄り添う本屋

 かつて経営していた本屋の倒産を経験した後、さわや書店に勤めながら考えた本屋の姿をまとめた『まちの本屋 知を編み、血を継ぎ、地を耕す』(ポプラ社)を2015年に上梓してから、一貫して「身の丈の本屋」の姿とは何かを考え続けてきた。
 19年にさわや書店を退社し、現在は楽天ブックスネットワークに勤務している。同社の書籍小額取引サービス「Foyer(ホワイエ)」を通じ、これまでの本屋の枠組みから飛び出し、地域のなかにいかに本を根づかせるかをテーマに、自治体と連携した読書教育や、本に関するイベントの企画、図書館と書店の協働を行ってきた。
 その試みはまだ大きく花開いていないが、全国各地に新しい蕾がふくらみはじめ、生活のなかに本がある暮らしの豊かさを、本屋という場を通して伝える道が見えてきた。
 本屋は本を買う場であると同時に、来店される方々が趣味や興味を持ち寄り、多くの本から自身の気づきを見つけ出す場である。その場を維持することの難しさは身に染みて知っているが、それでも本屋にこだわり続けたいと思う。
 本と出合い買うことができる場所としての本屋に、地域の情報ネットワークの核として、本を介在させながら、人と人、人とモノ、人と地域、地域と地域をつなぐ機能を付け加えることを模索し続けたい。
 連載を通じ、本の未来に寄り添うこれからの本屋の姿を見つけることができたら幸いです。よろしくお願いします。
(本紙「新文化」2021年1月14日号掲載)

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