第69回 情報のハブとしての本屋

数年来、未来読書研究所では、自治体や地域の運営に携わる方々に、「本を活用した地域づくりの拠点を設けませんか」とご提案し続けている。地域づくり・地域コミュニティづくりの中核として新しく本とのタッチポイントを活用しようという動きは年々増えている。

新しい本とのタッチポイントは、集める・貸し借りする・語り合う・贈るなど売買に限らない。そのなかでもう一度「売る」を選択してもらうために、機能をもった本屋づくりを提案している。そのひとつが、「地域やある領域のメディアとしての機能」をもつ本屋だ。自身の強みを活かした情報のハブとしての本屋のカタチとはどんなものだろうか。

株式会社週刊つりニュースが運営するサカナに特化した本屋・SAKANA BOOKS(東京・新宿区)は、そのモデルとなるのではないだろうか。

SAKANA BOOKSには、魚に関するZINE、フリーペーパー、もちろん図鑑や、魚が登場する絵本や小説、表紙が魚のイラストの本や、タイトルに魚が入っている本などが展開されている。

さらに、今年4月には新たにブックレーベルを立ち上げ、サカナ好きの、サカナ好きによる、サカナとヒトのための情報を発信している。「いいさかなの日」にあたる11月3日には、サカナとヒトの未来を創造するための新メディア「サカナト」をスタートさせる。SAKANA BOOKSを起点として、一連の活動はサカナという領域のメディアとして認知されつつあり、今後の展開が楽しみである。

(本紙「新文化」2023年11月2日号掲載)

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