8月に入り、全国の自治体や公共図書館関係者から、図書納入に関する書店側からの働きかけについての情報が入り始めた。日本書店商業組合連合会が、関係機関に対し提出した「官公庁、自治体、公共・学校図書館の図書調達に関するお願い」に関する要望書についてである。
要望書は、新刊の書籍、雑誌が独占禁止法で定価での販売が認められていることを根拠に改定された再販売価格維持契約のヒナ型を添付し、各自治体に対して図書調達の予算化に当たっての定価購入を求める内容となっていた。
再販契約は、独禁法第23条の規定に則って定められている。たしかに23条では定価販売という価格拘束を認めているが、当然ながら再販契約より、独禁法のほうが上位の規範だ。
独禁法には「適用除外」という例外規定がある。23条第5項では再販契約を遵守しなくてもよい団体に組合などをあげており、中小企業団体の組織に関する法律や中小企業等協同組合法に基づいて運営されている書店組合なども含まれる。
この「適用除外」がある以上、独禁法が認める雑誌や書籍の価格拘束は、自治体と書店組合との取引で、定価購入の遵守を求める法的根拠にはなりえない。今後、自治体からもそうした見解が示されるだろう。
個人的には定価購入要望よりも、装備費を含む定価購入という実質値引き問題の解消に取組むべきだと思う。人件費や装備資材費が高騰し、公共図書館との取引が赤字取引になるかどうかの瀬戸際の今、国による最低賃金の引き上げも交渉材料になるのではないか。
(本紙「新文化」2025年9月4日号掲載)