第115回 本郷西小学校の工夫

去る9月25日・26日の2日間、出前授業「読書の時間」を開催するため、広島県三原市にある本郷西小学校を訪問した。中心市街地から車で約30分の中山間地域にある公立小学校である。

読書教育を学校教育の大きな柱としていると聞き、楽しみにしていたのが、実際に訪問し、校内のいたるところに施された本と出合う仕掛けが楽しく、授業に来ていることを忘れて見学させていただいた。本郷西小学校ということもあり、「”ほんにし”たしむ図書館」をスローガンにしているそうだ。

朝原校長先生から「学校図書館だけではなく、校舎すべてを図書館として活用している」と説明いただいた通り、中央玄関正面にも、職員室の掲示板にも、各教室の入口にも、渡り廊下にも、たくさんの本が展示されており、児童は校内のいたるところで自然に本と出合うことができる環境がつくられていた。

何より、行ってみたくなる環境づくりの一環と”して、景観を見ながらの「ゆったり」読書スペースは、すごく素敵な空間だった。図書館に入ると「絵本の世界に浸れる」をテーマに、窓全面に水性クレヨンで絵本の一場面が色鮮やかに描かれていた。絵本の世界越しに見る外の景色がきれいで、ついつい座って本を読みたくなる空間だった。

今回の出前授業は、授業参観の時間だったこともあり、児童だけではなく、保護者の皆さんにも参加していただいた。親子のコミュニケーションツールとしての本の存在価値を、再発見する機会となったことも大きな収穫だった。

(本紙「新文化」2025年10月2日号掲載)

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