第11回  だいじょうぶ だいじょうぶ

 EHONS TOKYOが1周年を迎えた。「絵本から始まる、すべての人の物語のために」をコンセプトにもっと絵本の世界を楽しんでもらうための場所として、2021年10月に丸善丸の内本店内にオープン。簡単に言えば絵本と雑貨のお店。でもその道のりはたやすいものではなかった。
 実は書籍のグッズ化に私はまったく乗り気ではなかった。形づくるのは想像力であって、実体化の必要性はないとずっと考えていたからだ。ただ、書店の在り方が大きく変わるべきだということはコロナ禍を体験し、ますます強く思っていた。
 今までの書店は、受け身だった。作家さんが生み出したもの、出版社さんが発行したものを、選定して提案するだけ。本の世界を楽しんでもらうための「+α」として、私たちがオリジナルで何かを制作し、本をもっともっと手渡していくための手段として、広く発信していくべきではないかという考えには強く惹かれた。
 商品の開発、宣伝、店頭展開についてなど、それこそ〝やりたい屋〟の本領発揮、と言いたいところだが、忙しすぎて頭の切り替えが追いつかない。新しく学ぶこともたくさんあった。雑貨や文房具のことなど、メーカーから用語まで覚え直し。ちなみに商談中「SKU」すらわからなくって、机の下でスマホで調べる始末。(商品を数える単位でした)分からない用語が出てくると「もち帰って担当に確認しますね」と笑顔で乗り切る術も覚えた。また宣伝用にはじめたInstagramは、動画編集して音楽をつけられるまでになった。(ちょっと自慢)

 開店から1年、オリジナルのグッズもだいぶ増えた。ゼロから自分が作ったものだから、どの子もみんなかわいい。さらにうれしいことは本の売上げがとても良いということだ。例えば『こんとあき』(福音館書店、林明子作)のEHONS オリジナルグッズと書籍のフェアは、丸善ジュンク堂書店ほぼ全店の約80店舗で開催したが、開始から1カ月で前年の3倍書籍が売れた。
 今の自分がやっていることは正しいのか、作家さんや出版社さんなど多くの人を巻き込めば巻き込むほど、不安と葛藤でいっぱいの毎日だ。ほぼ私のためにつくったような、こんの名台詞「だいじょうぶ だいじょうぶ」のスタンプ。ありがたいことに飛ぶように売れている。こんは私の王子様だ。「だいじょうぶ だいじょうぶ」どんなときも絵本が私を救ってくれる。そう信じて作られるEHONS のグッズが、多くの人に刺さらないわけないと自分を奮い立たせている。
(本紙「新文化」2022年11月3日号掲載)