第82回 本屋か100円ショップか

 福井でドライブをしていたら、書店の看板が見えたので、立ち寄ることにした。
 都内と違い、車移動がメインの土地では、遠くからでも「本」という文字が目立つ看板を掲げる店が多い。そして大抵、文房具やCD・DVDの売場が併設されている。その書店は100円ショップの看板も並べて掲げていた。
 しかし、である。見渡す限り本棚がない。広い売場に100円の雑貨や文房具が所狭しと並んでいた。レジで訊ねると、書店はだいぶ前に閉店して、今は100円ショップだけなんです、とのこと。
 何故看板を外さないのかは不明だが、ここでは書店より100円ショップの需要が高いということである。その理由は、この地でしばらく暮らせば実感できることだった。
 Amazonで注文すれば、本は1冊でも送料無料だ。在庫があれば、都内でなくとも翌日には届く。一方、100円ショップにありそうだな、という品物をネットで探しても、商品代以上の送料がかかる。業界最大手の「ダイソー」は合計1万1000円以上で送料無料だ。
 ご祝儀袋、接着剤、紙コップ、充電コード……コンビニにも価格で負けない100円ショップが残るのは、当然の帰結だ。本が日用品の時代は終わったのやもしれぬ。

(新井見枝香/HMV&BOOKS SHIBUYA)

(本紙「新文化」2022年9月29日号掲載)