第24回 豊潤な秋、浮かれる私

胸の高鳴りが抑えられない。届いた本をそっと撫ぜる。キラキラまぶしい表紙。焦げ茶色の木の棚に、少しくすんだ水色が映える。らいおんbooks、待望の新刊。私が編集に関わらせていただいた、堀川理万子さんの『ひみつだけど、話します』(あかね書房)の発売日を迎えた。

森山京先生の「かばのこカバオ」シリーズ(発売時は偕成社刊・現在は風濤社刊)が大好きだった8歳の私。何気ない日常生活のなかにたくさんの物語があることを知った。本を五感で読む体験をさせてくれたのは、森山先生だ。私の過去の読書の記憶が一番鮮明なのが8歳の頃。その頃に出会った言葉は、心と体を大きくするための栄養となり、一生の自分の血肉になる。その事を、アラウンド8歳の子どもたちに絶対伝えたくて企画したのだ。森山先生からもらった読書の喜びを原動力とし、いつか読み物をつくってみたいと思っていた。企画を立ち上げて3年。夢が叶った。

ある町の3年3組の子どもたちの放課後のそれぞれの時間が丁寧に描かれた物語。書いてくださったのは、堀川理万子さん。取り立てて大きな事件が起こるわけではないのだけれど、子どもたちの毎日には、いつも何か新しい体験や発見があるものだ。その愛おしい時間を本当にキラキラと表現してくださった。

はじめて理万子さんの絵本に出会ったときから、絵はもちろんのこと、その文体が好きだった。遠すぎず近すぎず、物語の主人公と作者の距離感がなんとも絶妙なのだ。今回も、抜群の距離感で子どもたちの日常のなかの物語を書いてくださった。もちろん、挿絵も理万子さん! 最高!
童話といえば森山先生に縁の深いあかね書房さんで出したいという希望が叶ったのもうれしかった。担当してくださったのは大好き会のメンバーでもある編集のCちゃん。本当に心強かった! 作家さんを交えての会議で、この企画に「コードネーム8歳」という粋な命名をしてくれたのもCちゃん。そして素敵な企みには、まだまだ続きがあるのだ。この本の続きが出るわけではない。読んだ人にだけわかる、でも、結構な大仕掛け。この先をどうぞお楽しみに!

自分でつくった本を棚に並べられる幸せ! 後輩に「出版社営業より圧が強すぎる」と言われながらもスペースを空けてもらい、いたるところに並べまくって計4カ所。完全に浮かれてる。私の自慢の一冊、届け!

奥付はCちゃんが大安の日を選んでくれたのだけれど、なんと私の誕生日! 今年は夏からいきなり冬になり秋がなかったけど、私にとっては、大豊作の季節になった。

(本紙「新文化」2023年11月30日号掲載)

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