第12回 今の消費者、これからの読者

 書評誌「本の雑誌」初の10代向けのブックガイド、『10代のための読書地図 別冊本の雑誌20』(本の雑誌社)が6月下旬に出版される。
 公開された目次を見ると、朝の読書や夏休みの読書感想文に対応した「本の雑誌が選ぶ10代におすすめする100冊座談会」や「ジャンル別10代おすすめ本ガイド」、そして「全国書店員がおすすめする10代に読んでほしい本&10代のときに読んでおきたかったと後悔した本」などが並ぶ。
 さらには「本屋さんや図書室で使いたくなる用語集」や「本好きのためのハローワーク」の見出しもあり、本の雑誌社ならではの切り口にニヤリとする。発売が待ち遠しい。
 与えられた本ではなく、自分が選んだ本での読書体験が増える学年は小学4年生前後と言われており、年齢にしたら10歳前後である。
 そのあとの13歳から19歳は子どもと大人の間で、出版界にとっては大切な「これからの読者」たちの世代だ。
 彼ら、彼女らとは、いまの消費者という視点で向き合うのではなく、出版界をあげて「これからの読者」という視点で向き合う必要がある。
 それは「いいことだから」と押し付けることや、教訓やしつけなどを短絡的に結び付けることではない。自分をデザインするための基礎を見つける大切な時期を過ごす「これからの読者」へ、暮らしのなかに本のある大人たちからの様々なメッセージを伝えることだと思う。
(本紙「新文化」2021年6月24日号掲載)

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